農業情報研究所環境エネルギー2018530

本末転倒 営農型太陽光発電 4分の1が営農に支障 農水調査

 農水省が農地に支柱を立てて営農を継続しながら上部空間に太陽光発電設備を設置する、いわゆる「営農型発電」の営農への影響に関する都道府県依頼調査の結果を発表した(営農型発電設備の現状について 農林水産省 平成305)。

農地一時転用許可を受けて農型太陽光発電施設を設置した件数は平成271915)年度末に755件に上った。その40%ほどの「下部農地での営農に支障が生じたもの及び下部農地の面積が1000㎡を超えるもの」321件を調査したところ、約4分の1の81件において「下部農地の営農に支障」が見られたという。「支障」の内容は明示されていないが、多分、太陽光パネルによる日照遮蔽による作物(さくもつ、サクブツではありません)の収量や品質の低下、パネルやそれを支える支柱による機械作業の困難・効率低下などであろう。

「営農型太陽光発電は、営農の適切な継続をしながら発電事業を行うことで、作物の販売収入に加え、売電による継続的な収入等による農業経営の更なる改善が期待できる取組手法」(農水省;営農型発電設備の設置に係る農地転用等の取扱いについて)だそうであるが、現状では営農型太陽光発電の4分の1は「農業経営の更なる改善」に寄与するどころか、農業経営の悪化につながっていることになる。

この比率は担い手による太陽光発電においては6%(80件中5件)と少ない。ただ、これは担い手ともなると予め営農への悪影響を予想、そもそもうかつに営農型発電に手を出す者が少ないことの反映であろう(設置件数は担い手以外の241件の3分の1)。農地を覆う太陽光パネルの問題は営農への悪影響だけではなく、環境影響も無視できない。その普及は、景観、生物多様性、近隣の住環境などへの影響も考慮して再考せねばならないだろう。