農業情報研究所環境エネルギーニュース:2015年12月20日

 京都南山城村の森林伐採メガ―ソーラープロジェクト 昭和28年の歴史的大水害を忘れたか

 京都新聞の19日付けの記事が、「森林伐採、100haメガソーラー 京都・三重県境」と伝えている。

 開発現地は京都府南山城村と三重県伊賀市にまたがる一帯、事業者の説明では敷地面積は約100ヘクタールで、甲子園球場26個分に相当する。敷地のうち、約65ヘクタールに太陽光パネルを置く。発電出力は3万7500キロワットで、中部電力に売電する。敷地のうち、村側は約80ヘクタールで2区画。個人所有地や自治会区有林で、借地するという。

 事業者は、太陽光パネルを設置するため、谷を埋めたり山の斜面を削ったりして地形を階段状に変える。保水力や景観への影響を抑えるため、段ごとに調整池を設け、周囲を樹木で囲う案を示しているという。予定地は小高い山で、コナラやクヌギ、マツなどが生えている。国道163号沿いにあり、周辺には水田や住宅地、小中学校があるとのことである。

 こんなプロジェクトに土地を差し出した村、あるいは村人、何を血迷ったのだろう。原発立地地域と同様、カネに目がくらみ、将来起こり得る悔いても悔いきれない惨害など全く見えなくなっているとしか思えない。段ごとの調整池が山林の代役を果たせるはずがない。

 南山城村のホームページには、「過去の災害事例や南山城村の特徴である山間地域での大雨、洪水による土砂災害が、今後高い確率で発生が予想される」と書かれている。京都府の山城振興局は、歴史に残る昭和28年山城水害について次のように伝えている。

 「日本がまだ戦後の復興期にあった昭和28年(1953年)、8月14日から16日にかけて近畿北部に停滞していた寒冷前線が原因で、京都府南部から滋賀県南部さらに三重県西部にかけての地域が雷を伴った激しい豪雨に見舞われました。相楽、綴喜地方では、特に8月15日午前1時から午前5時以降まで激しく降り、和束町湯船地域では総雨量428mm、時間雨量100mmに達するなど、正に記録的な大雨となりました。(等雨量線図参照)
  この大雨により、相楽郡では洪水や土石流の発生や堤防の決壊が起こり、綴喜郡井手町では大正池の堤防が決壊するなどの被害が発生し、相楽、綴喜地方で死者と行方不明者336名、重傷者1,366名、被災家屋5676戸、被害総額150億円(当時)の大災害となりました。
  この災害の特徴は、山地崩壊や土砂流出によって引き起こされた土砂災害であることです。後の調査結果によると、崩壊箇所6551箇所、崩壊土砂量は10トントラック30万台分に相当する227万立方メートル、流出土砂量140万立方メートルにも及びました。
  南山城地域は、風化した花崗岩地域であり、もともと崩壊や流出を起こしやすく、さらに被害河川には天井川が多く、短時間で増水したことも被害を拡大させた要因です。さらに、当時の社会的背景として、戦後の食糧不足を補うための開墾や燃料資源の採取等によって、山地荒廃が著しかったことがあげられます。
  この8月14日から16日にかけての集中豪雨による災害を「南山城水害」と呼んでいます」。

 こんな大災害のことを知る人も村にはほとんど残っていないのだろうか。だとすれば、悲惨な歴史を繰り返そうとしている今、それを知る行政はただちにプロジェクトにストップをかけるべきである。行政にそんな権限はない?ならば、こんなプロジェクトを報じたマスコミ(京都新聞)、同時に強力なメガソーラー環境規制の導入を国に迫るべきであろう。