中国、豚のH5N1感染「偶発例」を認める 豚→豚・豚→人感染の可能性の証拠はなし

農業情報研究所

04.8.28

 前に伝えたとおり(中国政府、豚の鳥インフルエンザ感染を否定,04.7.24)、今週月曜日(23日)、中国農業部は、国中で大規模なモニタリングを実施したが、豚の高病原性鳥イフルエンザ(H5N1)感染はなかったと発表した。ところが木曜日(26日)、今度は、農業部獣医局が、豚のH5N1及びH9N2インフルエンザ・ウィルスを分離・同定する実験で、01年と03年の間に採集されたサンプルからH5N1の二つの株が分離されたことを明らかにした。しかし、これに関連した研究は、豚のH5N1感染に関する明確な結論に達しなかったという。

 農業部は実験結果を受け、直ちに検証を開始した。以前に分離されたH5N1アヒルウィルスと同原であることが分かった。しかし、大規模で真剣なサーベイランスと研究にもかかわらず、新たに分離されることはなかった。これは、01年と03年のケースがアヒル起原の鳥インフルエンザ・ウィルスによる「偶発的感染」で、非常な孤発的なものであることを示唆し、H5N1ウィルスが豚から人、豚から豚に移ることができるという証拠はまったくないと言う。

 しかし、結論はどうであっても、豚が持つH5N1と人間に感染する鳥インフルエンザの関係については研究を強化する。そうすることで、この種の事態の勃発を予防し、コントロールすることができると言う。 

 鳥インフルエンザは鳥だけでなく、哺乳類にも感染する。アジアでは、鳥インフルエンザ・ウィルスの猫、虎、レオパード、豚などの哺乳類キャリア(保菌者)が報告されてきた。とりわけ人と共通のインフルエンザに感染する豚の鳥インフルエンザ感染は、ウィルスに人への感染能力を与える可能性を生む。特に豚と家禽が同居する場合が多い中国やその他のアジア諸国での鳥インフルエンザ蔓延の長期化は、この可能性が高まっていることを意味する。人にはまったく免疫のない高病原性H5N1ウィルスがこの感染能力を獲得すれば、アジアのみならず、世界中に致死的な感染症が広がると恐れられている。

 くるくる変わる中国政府の発表に右往左往する必要はないかもしれない。しかし、今後の研究の進展からは目が離せない。

 関連ニュース
 No pigs with bird flu in mainland ? Ministry,China Daily,8.27
 China confirms bird flu in pigs,BBC News,8.26