中国政府、口蹄疫と鳥インフルエンザの拡散を発表 一層の拡散、家禽・人の感染は否定

農業情報研究所

05.5.28

 中国農業部が27日、二つの感染症―口蹄疫と鳥インフルエンザ―が家畜と鳥の間に広範に広がっていることを認めた。国務院情報局が組織した記者会見で獣医局高官が明らかにしたもので、発表の遅れは、中国に感染症に関する迅速な情報提供の用意があるのかどうか、改めて疑わせる。

 China Daily紙(China: Foot-and-mouth disease under control,5.27;Nation ready as bird flu outbreak is stemmed,5.28)が伝える発表の内容は次のようなものだ。

 口蹄疫

 5月始め、新疆ウイグル自治区和布克地区、北京の延慶地区でアジアタイプTの二つのケースが確認され、それぞれ75252頭の病牛が報告された。河北省三河でも何頭かの肉用牛の感染が発見され、同一牛群の512頭が処分された。全体で4883頭が病気拡散防止のために処分された。感染源は調査中という。なお、27日の報道では、4月初めには山東省、江 蘇 省でも牛の感染が確認されたとされている。豚の感染はないという。

 病気の発表の遅れに対する批判に対しては、遅れの理由の一部は感染確認に手間取ったためでと弁明、貿易の観点から発生を隠す意図はなかった、99年のO型の発見以来、中国は口蹄疫に感染する可能性のある偶蹄類動物製品の輸出が不可能になっていると言う。

 鳥インフルエンザ

 178羽の渡り鳥が死んだという以前の発表(中国、インドガンがH5N1ウィルスで大量死 全国でワクチン接種を含む拡散防止措置,05.5.23)を大きく修正、5月26日までに1000羽以上が死んだという。青海省の家禽の感染については、省の218万羽の家禽で感染が発見されたものは1羽もないとし、人間の感染も全くないという。渡り鳥の移動経路からして、他の地域に広がっていることもありそうにないと言う。

 家禽の感染の可能性について、専門家は、家禽は水や餌場を野鳥と共有していることが多いから、家禽の感染リスクはあると言っている。

 しかし、発表では、感染地域は閉鎖され、消毒もした、近隣や渡り鳥の移動ルートのすべての家禽にワクチンを接種した、渡り鳥と接触した者は観察下に置かれるなどと、病気の拡散は防げるという。さらに、25日には、中国科学者が家禽・水鳥・人間の発病を100%防ぐことができる新たな2種のワクチンを開発したと発表しており、これで中国の鳥インフルエンザ・コントロールは万全となる考えている。

 Boxunと称し、通信員が自由に投稿できる中国語サイト(http://www.boxun.com/)は26日、青海省西部の18の村で121人が鳥インフルエンザで死んだ、1300人ほどが隔離されたと報じた。また、感染者に接触した人は外部に話すことを禁じられたとも伝える。発表は、このような報道が掻き立てる不安の沈静を意図したものであろう。

 しかし、2003年のSARS勃発への対応の遅れと秘密主義で、中国は集中砲火を浴びた。ネイチャー誌の今週号を世界中の人間の間に鳥インフルエンザが蔓延する脅威の問題に当て、中国の透明性と準備の欠如・不足を批判している。口蹄疫といい、鳥インフルエンザといい、中国の対応には国際社会の一層厳しい監視が必要なようだ。

 今年のWHO年次会合は、病気勃発に対する各国と国際社会の対応を強化する新ルールを採択した(WHO,World Health Assembly adopts new International Health Regulations,5.23)。中国政府も、今までのような対応は改めねばならないかもしれない。しかし、OIE年次会合は、鳥インフルエンザ・ワクチンを接種された鶏の輸入規制を緩め、また鳥インフルエンザ勃発への対応方法に関して各国に一層の自律性を与える決定も行った。中国政府が一層独自の道に走り、ウィルスを永久に潜在させるワクチン大量接種戦略を一層強める恐れもある。