デンマーク当局 渡り鳥による狩猟用飼育カモの鳥インフルエンザ感染に警告
(Farm-bred ducks feared to bring bird flu to Denmark from Siberia)

農業情報研究所(WAPIC)

05.8.1

 デンマークの専門家が、狩猟シーズンを前に現在野に放たれつつある農場で育てられたカモが、現在アジアで流行している鳥インフルエンザに感染している可能性があると恐れている。コペンハーゲン・ポスト紙によると、デンマーク獣医・食品局の獣医で主任コンサルタントのStig Mellergaard氏が、カモは、南東アジアからの多くの渡り鳥の営巣地であるシベリアから飛んでくる野生の渡り鳥と接触するから、カモ繁殖は鳥インフルエンザのリスクが増えていると警告している(Ducks feared to bring bird flu to Denmark,The Copenhagen Post,8.1;http://www.cphpost.dk/get/89693.html)。

 シベリアの渡り鳥のH5N1ウィルス感染の発見の報を受けてのものだろう。

 獣医・食品局は、デンマークでどれほどのカモが農場で飼育されているかつかんでいないおらず、感染リスクを減らす規制も存在しないと言う。現在、規制と農場のサーベイランスの強化を計画中という。デンマーク狩猟協会も当局に協力すると言っている。

 ネイチャー・ニュースによると、カザフスタン・Golubovkの村の養鶏労働者が鳥インフルエンザの症候を示して入院していることを政府が認めた。政府はH5N1ウィルスが村の600羽のギースを殺したと確認したという。日本の野鳥協会のSimba Chan氏は、この時期、渡り鳥は通常はこのコースを飛ばないから、病気が中国からロシアに移ってきたということはありそうもないと言い、英国のウェイブリッジ獣医学試験所のイアン・ブラウン氏は、発生が未だ申告されていない近くの中国の鳥インフルエンザから拡散したと示唆している。しかし、国連食糧農業機関(FAO)のJuan Lubroth感染症部長は、なお渡り鳥による拡散を懸念、いまなすべき最善のことは、野鳥集団を無作為に検査するサーベイランス区域の設置だという(Bird flu moves towards Europe,news@nature,8.1;http://www.nature.com/news/2005/050801/full/050801-1.html)。

 アジアのH5N1ウィルスが渡り鳥を介し、ロシア、カザフスタンを経てヨーロッパにまで拡散するリスクは否定できないようだ。このリスクを軽減する方策は、ヨーロッパでは確立していない。現在までのところ、低病原性の鳥インフルエンザが高病原性に変わり、人から人に感染するようになるのを防ぐためのワクチン接種の限定的利用 (厳格な監視と感染鳥との識別が可能なことが要件)も含めた対策の確立が模索されているだけである。

 関連情報
 シベリアの鳥の大量死 原因はやはりH5N1鳥インフルエンザウィルスーロシア農業食糧省,05.7.30