EU フランスとオランダのワクチン接種計画を承認 鳥インフルエンザ封じ込めに転機

農業情報研究所(WAPIC)

06.2.23

 EUの食料チェーン・動物保健常設委員会(SCFCAH)が22日、フランスとオランダに高病原性鳥インフルエンザの予防措置として家禽への限定的ワクチン接種を行うことを許す欧州委員会の提案を承認した。両国のワクチン接種計画は、昨日伝えたような特定地域の特定の鳥に対してのみ許され、厳格なサーベイランスと管理の要件を満たさねばならない(EU農相理事会 鳥インフルエンザ侵入による農家損害補償とワクチン接種で分裂,06.2.22)。これらの要件には、移動制限、鳥インフルエンザ発生を見逃さないように保証するためのワクチン接種を受けた鳥の厳格な監視、注意深い記録保存などが含まれる。欧州委員会提案には、これらに加え、ワクチンを接種された鳥とその製品の貿易の条件と制限に関する定めも含まれている。

 Avian Influenza: Vaccination of certain poultry in France and Netherlands approved(2.22)

 EUは、一般的にはワクチン接種を禁止してきたし、禁止している。しかし、鳥インフルエンザに関する昨年12月の新指令(Council Directive 2005/94/EC)は、加盟国内での、あるいは加盟国への鳥インフルエンザ拡散の重大で差し迫った脅威があることをリスク評価が示すときの短期的措置としての緊急ワクチン接種、国土内の一定地域・家禽が鳥インフルエンザの脅威に曝されていることをリスク評価が示すときの長期的措置としての予防ワクチン接種の導入の可能性を規定した。にもかかわらず、主としてワクチンを接種された鳥は販売が難しくなるという理由で、その実際の適用には大きな抵抗があった。今回の承認は、野鳥の感染がとどまることを知らない現在のEUの状況の中で、EUの鳥インフルエンザ封じ込め戦略が転機にさしかかっていることを示す。

 キプリアヌ保健・消費者保護担当委員は、「EUにおける野鳥の鳥インフルエンザの最近のケースは、家禽をウィルスから保護するためのありとあらゆる可能な選択肢を探求する必要性を強めてきた。十分な保証措置を伴う限定されたワクチン接種は新たな鳥インフルエンザ指令で許されており、既にEUに設けられている厳格な予防措置と結合されるときには有効な手段であり得る」と言う。

 承認されたフランスとオランダのワクチン接種計画は昨日述べたとおりだから再掲しない。ここでは、特にワクチンを接種された家禽の移動に関する欧州委員会の追加条件を記しておく。

 フランス(一定地域のアヒルとガチョウにワクチンを接種)

 ワクチンを接種された家禽、その卵、一日齢の雛は他の加盟国または第三国[EU域外国]に輸出または移動できない。フランス内部では、ワクチンを接種した他の農場、ワクチンを接種された家禽と接種されていない家禽を完全に分離している農場、直ちにと殺すると殺場にのみ移動できる。ワクチンを接種された家禽の生鮮肉と肉製品は、上記のすべての条件を満たす農場からのもので、それが由来する家禽がと殺の48時間前までに獣医の検分を受け、すべての適切な動物保健ルールに従っているかぎりで、EU域内で販売でき、第三国にも出荷できる。また、ワクチンを接種された家禽とその製品のすべての容器または輸送手段は適切に洗浄され、消毒されねばならない。

 オランダ(全国のホビー用家禽と屋外放し飼いの採卵鶏にワクチンを接種)

 ワクチンを接種されたホビー用家禽は、当局の許可に従って、オランダ国内のワクチンを接種した他の庭先放し飼い場にのみ移動を許される。これらの家禽の他の加盟国への移動は、オランダ当局と受け入れ国当局の許可を受けねばならない。その肉と製品の営業販売は許されない。ワクチンを接種された放し飼い採卵鶏は、オランダ国内の他のワクチンを接種した養鶏場か、直接と殺場に移動できるだけでである。これらの鶏からの卵は、それが鳥インフルエンザのない養鶏場由来のものであると証明されるかぎりでEU域内または第三国に販売でき、公認の場所で処分可能な容器に、必要な生物安全措置に従って包装されねばならない。これらの採卵鶏からの生鮮肉と肉製品は、すべての基準を満たす養鶏場からのもので、それが由来する家禽がと殺の48時間前までに獣医の検分を受け、一般的な動物保健ルールに従っているかぎりで、市場に出すことができる。