ドイツの農場家禽に鳥インフルエンザ確認 フランスではH5N1ウィルス感染の疑い

農業情報研究所(WAPIC)

06.2.24

 ドイツ当局が23日、今月16日に2羽の白鳥のH5N1鳥インフルエンザ感染が確認されたバルチック海・ドイツのリューゲン島の農場で、アヒルの鳥インフルエンザ感染が確認されたと発表した。ただし、H5N1ウィルスかどうかは未だ不明で、今後の検査で明らかになるという。

 First Case of Bird Flu Among Poultry in Germany Detected,DW-world,2.23
 http://www.dw-world.de/dw/article/0,2144,1913470,00.html

 EU諸国では野鳥のH5N1ウィルス感染が広がっているが、12日にギリシャとイタリアで野鳥の感染が初めて確認されて以来、農場で飼育されている家禽の鳥インフルエンザ感染が発見されたのはこれが初めてだ。22日にはオーストリア南部でニワトリなどの家禽のH5N1ウィルス感染が確認されたが、これは保護施設の家禽だった。

 鳥インフルエンザ感染が確認されたのは、106羽のニワトリとアヒルを飼う小農場のアヒルで、この農場の家禽は日常的検査で3羽の家禽の感染の疑いが出たのちにすべて殺処分されたが、感染が確認されたのはこのアヒルだけだったという。しかし、フランス農業省も23日、18日にカモのH5N1ウィルス感染が確認された東部・アン県の農場家禽(七面鳥)にH5N1ウィルス感染の疑いが出たと発表した。この農場は隔離下に置かれたという。

 Suspicion d'influenza aviaire dans un élevage de dindes de l'Ain、2.23
 http://www.agriculture.gouv.fr/spip/leministere.leministrelecabinet.communiquesdepresse_a5779.html

 ウィルスは、既にEU諸国の多くの家禽に潜在している恐れが強まった。野鳥のH5N1ウィルスが確認されて以来、EU諸国の鶏肉販売は急減している。未だ野鳥の感染も確認されていないデンマークでさえ、鶏肉販売が50%も減少したというスーパーがある。

 Consumers immune to bird flu fears,Copenhagen Post,2.23
 http://www.cphpost.dk/get/94067.html

 多くの域外諸国もヨーロッパからの家禽・家禽製品の輸入停止に走っている。需要減少に加え、今後は鳥インフルエンザの直接的被害も増える恐れがある。20日の農相理事会は、市場混乱による養鶏農家の損失の補償を求めるイタリアとギリシャの要求を拒絶した。欧州委員会も、今までのところ野鳥の感染が確認されただけで例外的市場支持措置を取るほどの市場の混乱はないとこの要求を拒絶してきた。しかし、狂牛病危機に際して設けられたような特別援助制度の創設も考えなければならない事態に発展するかもしれない。

 アン県の七面鳥の感染の疑いが出たことを受け、フランスのシラク大統領は、”政府と公権力を総動員する”というコミュニケに署名した。ルメタイエ全国農業経営者連盟(FNSEA)会長は、輸出向け在庫が1万2000トン、国内で販売されなかった在庫が2万トンある、フランスの家禽リ販売は30%ほど減少していると、養鶏農家と関連企業への政府の緊急援助を要求した。彼は、フランスはヨーロッパ第一の家禽生産国だと強調する。ドピルパン首相は、既に発表されている1100万€に加え、5200万€を追加援助すると発表した。2000万€は養鶏業者、300万€は関連部門企業に支払われ、200万€が”状況に関する情報キャンペーンと家禽消費の奨励”に当てられる。「我々は状況の変化に応じて援助の調整を行う」と言う。フランス家禽産業代表者は、危機が始まって以来の損害が1億3000万€にのぼると推定している。

 "Mobilisation totale" du gouvernement et nouvelles aides à la filière avicole,Le Monde,2.23
 http://www.lemonde.fr/web/article/0,1-0@2-685875,36-744643@51-644973,0.html

 だが、こんな援助を受けられる業者は恵まれていると言ってよいだろう。最大の被害者は、基本的には自給のために鶏やアヒルを飼ってきた多くの家庭・人々だ。幾世代にもわたって鶏とアヒルを飼い、クリスマスのために自ら七面鳥をと殺し、育ち盛りの3人の子供に毎日新鮮な卵を食べさせてきたアイルランドの数千の夫婦の中の一夫婦は、もし鳥インフルエンザ勃発となれば(アイルランドでは未確認)、こんな生活がすべて奪われると恐れる。彼らの鳥たちは、フェンスのない土地で本物の自由な生活を享受しており、アヒルは池で気ままに過ごす。多くの野鳥、白鳥もやってくる。感染した野鳥の侵入が確認されれば、もちろん、こんな飼い方は許されなくなるだろう。

   Threat raises concerns over future of poultry-raising tradition among families,Irish Independent,2.23
 
  
しかし、多くの国が始めたように、鳥たちを屋内に閉じ込めたとしても、野鳥からの感染が防げる保証はない。「伝統的方法で育てられた鳥は、集約的閉鎖システムで飼育される遺伝的には類似の鳥よりも強い病気抵抗性を持つ可能性が高い」(米国生物倫理学者 強毒性鳥インフルエンザの根源は工場養鶏 対策費用は工場産品課税で,05.11.15)とすれば、このような危機に直面しても彼ら夫婦のやり方を維持するほうが賢明だ。それを棄てねばならない理由はない。巨大規模工場養鶏は破滅的被害を蒙るかもしれない。

 追記(17:50)

 フランス・アン県の七面鳥のH5ウィルス感染ほぼ間違いないようだ。 この農場が位置するVersailleux村は、野生のカモのH5ウィルス感染が確認さされているJoyeux村の北隣の村だ。やはり野生のカモのH5ウィルス感染が確認されているBouventが位置する町(Bourg en Bresse)からもそう遠くは離れていない。 この養鶏場は1万1000羽の七面鳥を飼う密閉された養鶏工場という が、何らかのルート(フランスのテレビ放送では、養鶏場に出入りする人、屋外に貯蔵されている野鳥の糞等により汚染された敷き藁などが有力視されている)を通じて野鳥のウィルスが侵入した可能性が高い。

 Mesures de précaution renforcées dans la Dombes à la suite de la suspicion d'influenza aviaire dans un élevage de volailles(Ministère de l'Agriculture, de l'Alimentation, de la Pêche et des Affaires Rurales,2.24)
  http://www.agriculture.gouv.fr/spip/leministere.leministrelecabinet.communiquesdepresse_a5784.html

 Les dindes mortes dans l'élevage de l'Ain sont porteuses du virus H5,Le Monde,2.24
 http://www.lemonde.fr/web/article/0,1-0@2-685875,36-744700@51-644973,0.html