インドネシア大都市の100匹以上の迷い猫がH5N1鳥インフルエンザに感染

農業情報研究所(WAPIC)

07.1.16

 マレーシア紙の報道によると、マレーシア・エアランガ大学鳥インフルエンザ研究所長のC.A.ニドム博士が、インドネシアの主要都市街路の100匹以上の迷い猫がH5N1鳥インフルエンザに感染していることを明らかにした。

 博士は、昨年9月から12月まで、ジャカルタ、スラバヤ、スマラン、バンドン、タンゲラン、ランプンの街の500匹の猫を検査し、100匹が感染していることを発見した。迷い猫は鶏を販売する市場や鳥インフルエンザ患者治療のために指定された病院の近所で集められた。これらの猫は、検査後、すべて街に放された。博士は処分する何の権利も持たないためという。

 Bird Flu update: Alarm as infected stray cats roam the streets,The New Strait Times,1.16
  http://www.nst.com.my/Current_News/nst/Tuesday/National/20070116084009/Article/local1_html

  博士は、

 「検査はウィルスがますます複雑になっていることを示す。我々は考え方を変え、ウィルスが鶏だけでなく、他の動物を通して人間に広がる可能性も熟慮せねばならない」、

 「猫の生物学的構造は鶏よりもはるかに人間に近い。猫は人間の同じ体温を持ちもするが、鶏はそうではない」、

 「私はこの結果に衝撃を受けた。猫がこの病気を伝達できるかどうか、一層の研究が必要だ」、

と言っている。

 その答えはわからないが、インドネシア政府がH5N1鳥インフルエンザに感染した猫が街をうろつくのを放置しているとすれば、今年だけでも4人が死んだ世界最大数の鳥インフルエンザ死者(61人)を持つ国の政府としてはなんとも能天気なことだ。 政府は15日、H5N1鳥インフルエンザ封じ込めのためにジャカルタ、バンテン、西ジャワの庭先(大規模営業養鶏はお咎め無し)で育てられるすべての鶏を殺処分すると発表した(Indonesia to ban backyard poultry to fight bird flu,ANTARA,1.16)。しかし、H5N1鳥インフルエンザウィルスは、今やそんなことではとても封じ込められないほどに遍(潜)在しているのではなかろうか。

 中国では10日、今年初の人間のH5N1鳥インフルエンザ感染が確認された。この安徽省の農民は庭先に鶏を飼ってはいるが、その鶏や地域の鶏には鳥インフルエンザの症候はまったく見られない。専門家は、ワクチンを接種された鳥が増えたために鳥インフルエンザの発見がますます困難になっている、このことがこの農民が住む地域で鳥インフルエンザ勃発が報告されなかった理由の説明になり得ると言う(Human bird flu case confirmed in Anhui,China Daily,1.10

  徹底した殺処分とワクチン接種戦略でH5N1鳥インフルエンザ一掃が期待されたべトナムでも、昨年12月以来今までに、メコンデルタ5州での再発が報告されている(Mekong Delta threatened by new bird flu outbreak,Viet Nam News,1.13)。タイでも15日、ほぼ6ヵ月ぶりに北部・ピサヌローク県のアヒルにH5N1鳥インフルエンザ感染が確認された(Fresh outbreak in Phitsanulok,Bangkok Post,1.16)。韓国、日本での勃発はわが国でも大々的に報じられているとおりだ。感染源・経路はいずれもわかっていない。恐らくは、もはや特定が不可能なほどにウィルスがどこにでも広がっているのだろう。既存の鳥インフルエンザ封じ込め戦略の根本的再考が迫られている。

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EU専門委 猫や犬からのH5N1感染予防措置を勧告 赤レベル・ブレス鶏の運命は?,06.3.3