H5N1ウィルスを運ぶ野鳥は世界のどこに 日本・英国・カナダ・アイスランド、どこでも発見されず 

農業情報研究所(WAPIC)

07.2.10

 環境省が8日、宮崎県清武町の高病原性H5N1鳥インフルエンザ発生地を中心とする概ね半径10kmの範囲で捕獲・採取した野生鳥類のすべての検体で高病原性鳥インフルエンザウイルスは検出されなかったと発表した。

 また、今年1月に実施した鳥取、島根、福岡、佐賀、長崎、熊本、鹿児島の7県15地点で採取したカラス類、カモ類、シギ類等の野鳥の糞便の検査でも、高病原性鳥インフルエンザウイルスは発見できなかった。そして、カラス類、カモ類、シギ類等の野鳥が多く集まっているねぐら等の場所で生息状況の確認を行ったが、今までのところ野鳥の大量死等の異常は確認されていないという。

 環境省;宮崎県清武町の高病原性鳥インフルエンザ発生地周辺での野鳥のウイルス検査結果並びに国内での野鳥のウイルス保有状況調査の結果及び調査期間の延長について(07年2月8日)
 http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=8018

 英国でも七面鳥農場でH5N1鳥インフルエンザが発生したが、北方からの渡り鳥が到達し始める昨年8月から現在までの合計4000羽を超える英国の調査でも、H5N1ウィルスはまったく発見されていない(英国H5N1鳥インフルエンザ勃発はハンガリーと関連?,07.2.5)。

 カナダ食品検査局(CFIA)も昨日、2006年の鳥インフルエンザに関する野鳥サーベイランスの結果を発表したが、カナダ中から集められた渡り鳥と留鳥、及び北米・ヨーロッパからの鳥が入り混じるアイスランド(英国への渡りの経路にも位置する)で集められた鳥、合せて1万2000羽の検査でもH5N1を含む高病原性鳥インフルエンザはまったく発見できなかったという。

 CFIA;Canada's 2006 Wild Bird Survey Concludes With no Findings of Highly Pathogenic Avian Influenza(07.2.9)
 http://www.inspection.gc.ca/english/corpaffr/newcom/2007/20070209e.shtml

 とりわけ日本へのH5N1ウィルス侵入経路については渡り鳥説が有力視され、それを念頭においた侵入遮断対策に力が注がれているようだが、H5N1ウィルスを運んでくる渡り鳥は一体どこにいるのだろうか。 野鳥、渡り鳥の感染率が極めて小さいために発見が難しいだけかもしれない。しかし、それが感染源だとすれば、発生地域周辺にも決して存在しないわけではないだろう放し飼いの鶏ではなく、専ら多少なりとも野鳥との接触に対する防護措置が取られている大規模養鶏場の鶏がやられるのか、その説明が必要ではなかろうか。 さもないと、納得できる感染防護措置も見つからない。

  英国環境食料農村省(DEFRA)は8日、英国七面鳥農場でのH5N1鳥インフルエンザ勃発とハンガリーでの勃発・ハンガリーからの輸入鶏肉の関連の可能性を調査していると発表した。この農場を持つバーナード・マシューズ社は、農場に隣接する工場で加工する冷凍鶏肉をハンガリーにある同社農場から輸入していたことから、これが有力な感染源と疑われている。DEFRAは、これは、他のあり得るルートとともに、徹底的に調査することが重要だと し、食品基準庁(FSA)やハンガリー当局、欧州委員会とも共同して調査を進めていると言う。野鳥にウィルスが発見されない以上、産業内部でのウィルス伝播の可能性も考えざるを得ないし、たまたま七面鳥農場を持つバーナード・マシューズ社がハンガリーに家禽企業を持っていたことがこの可能性の追求につながったのだろう。

 DEFRA;Avian influenza outbreak update(07.2.8)
 http://www.defra.gov.uk/news/latest/2007/animal-0208.htm
 FSA;Bird flu second update: 9 February 2007
 http://www.food.gov.uk/news/newsarchive/2007/feb/avianflu
 関連報道
 Tests on Hungary bird flu 'link',BBC News,2.9
 Bird flu officials investigating Matthews turkey plant in Hungary,The Guardian,2.9