農業情報研究所>環境>森林>ハイライト:2018年5月11日
森林経営管理法案 日本列島は禿山だらけ 災害列島に 林業者の警告 歴史に学ばぬ林野行政
目下国会審議中の森林経営管理法案、大問題です。こんな法案が通れば日本が禿山だらけ、日本列島は災害列島と化す恐れがあります。
「奈良県天川村。100年を超す大木が並ぶ。県内9市町村に1500ヘクタールの森林を所有する谷林業の谷茂則さん(43)が「100年を超す木を残す長期サイクルで林業を担ってきた吉野林の精神性と対極に、この法案はある」と淡々と語る。
「徳島県那賀町の林業者、橋本光治さん(72)は「この法案では大規模な伐採業者だけに集約される方向性に進むだろうが、それでは余計に荒れる山が増える」と警鐘を鳴らす。持続可能な山づくりを進める橋本さんは「林業を志す若い人のために、小規模でも集積し機械の投資を支援することが必要だ。忍耐強く長期的に森林をつくることが山づくりで、現場を知らない短期的な対策は失敗する」と断言する。」 「森林経営管理法案への懸念は、各地に広がる。自伐型林業推進協会(農業情報研究所注)は「法が成立すれば、目先の利益のため丸裸にされる山が増える。土砂崩れを誘引し、供給過多で木材価格はさらに安くなる」とみる。」 こんな法案が、「パブリックコメントもなく林政審議会で同庁が一度説明をしただけで国会に提案される、丁寧な議論を欠いた不透明さ、唐突さに違和感を抱く声も複数から上がっている。全国森林組合連合会の肱黒直次専務は「これまで政策立案過程で林野庁から意見聴取されてきたが、今回は意見を聞かれず、中身が分かったのは国会審議直前だった」と明かす。」
乱伐招く恐れ 「森林経営管理法案」審議へ 「山守る」林家の声を 主伐推奨荒廃進む 日本農業新聞 18.5.11
(農業情報研究所注)NPO法人自伐型林業推進協会のHP:http://jibatsukyo.com/を参照して下さい。
杞憂ではありません。
「江戸時代を迎える頃になると、人口の集中した江戸や大坂等の大都市で城郭や寺院をはじめとする建築用の木材需要が増大したこと等から、全国各地で生活用、農業用、建築用等のための森林伐採が盛んに行われるようになり、森林資源の枯渇や災害の発生が深刻化するようになった。・・・
「明治時代になると、我が国は急速に西欧の文明を取り入れ、近代化を進めた。木材の利用についても、建築用はもちろん、工事の足場や杭、鉱山の坑木、電柱、鉄道の枕木、貨物の梱こん包、造船材料、桟橋等の各種装置及び施設、紙に加工されるパルプの原料等、近代産業の発展に伴って様々な用途に木材が使われるようになった。これに伴い、国内各地で森林伐採が盛んに行われたため、森林の荒廃は再び深刻化し、災害が多発した。・・・」
「昭和10年代には戦争の拡大に伴い、軍需物資等として大量の木材が必要となり、これを満たすため未利用の森林の伐採が行われた。終戦後も、主要な都市が戦災を受け、食料も物資も欠乏する中で、復興のために大量の木材を必要としたことから、我が国の森林は大量に伐採された。このような戦中・戦後の森林の大量伐採の結果、我が国の戦後の森林は大きく荒廃し、昭和20年代及び30年代には、各地で台風等による大規模な山地災害や水害が発生した。」
そして、「山地災害等については、短時間強雨の発生頻度が長期的に増加傾向にあることの影響が懸念されている」 同34頁)今、「法案は林業構造全体を、公共的な利益から経済性の追求に転換させるものだ。これまでの政策では災害の防止を目的とした間伐に重点が置かれていた。今後はもうけるために大量の木材を供給する主伐を主軸に据える。森林所有者に伐採、造林、保育を義務化した上、実施しない所有者から経営管理権を奪って主伐してしまおうというのは、憲法が保障する財産権や営業の自由を侵害する恐れがあり、強権性が際立っている」(愛媛大学・泉英二名誉教授 日本農業新聞 同上)。
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