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欧州委、違法伐採木材と闘う行動計画 環境団体は実効に疑念

農業情報研究所(WAPIC)

03.5.23

 5月21日、欧州委員会は、違法伐採と違法伐採された木材の貿易と闘う行動計画を採択した(Commission adopts Action Plan to combat illegal logging and the trade in illegal timber)。

 欧州委員会は、違法伐採と違法伐採された木材の貿易は、地球の森林の急速な破壊の際立った要因であると言う。急速な森林破壊は森林資源に生活を依存する世界の多くの人々に悪影響を与えている。また、違法伐採は、多くの木材生産国で不正行為を蔓延させ、法のルールを損なっているとも言う。さらに、それは貧困削減計画に支出すべき各国政府の重要な収入源も奪い取る。世界銀行の推定では、違法伐採のために、途上国政府は年間100億ドルから150億ドルを失っているという。

 欧州委員会の提案した行動計画の骨子は次のようなものである。

 ・(EUの)パートナー諸国が木材が違法に伐採されたことを検証するシステムを建設するのを助ける。

 ・パートナー諸国がEUに輸出される木材の合法性を証明する許可証を発行する自主的ライセンス計画を発案する。

 ・契約当局が調達手続で木材を特定するに際して合法性を確保する公共調達。

 ・不法伐採を助長する活動への投資を防止するための措置。

 ・合法な木材だけを調達するための自主的行動基準の利用を含む森林部門の良好な慣行のための民間イニシアティブの奨励。

 ・違法に伐採された木材からの収入の武力紛争への利用によって生じる問題への取り組み。

 開発・人道援助担当のニールソン欧州委員は、「欧州委員会は、木材生産国における法の執行と統治の改善を助け、違法に伐採された木材と木材製品の貿易を停止させる活動により、違法伐採と闘うことを約束する」と言う。

 しかし、提案された行動計画によって目的が達成できると保証はできない。

 今月八日、環境調査エージェンシー(EIA)とインドネシアの環境グループ・Telapakは、2001年に国際貿易・絶滅危惧種条約(CITES)のリストに載せられたラミン・ウッドがインドネシアの森林で違法伐採され、マレーシアとシンガポールの業者により大量に取引されている事実を明らかにした(Malaysia,Singapore laundering illegal RI logs:Environment groups,The JakartaPost,5.9;Malaysia amd Singapore 'laudering' illegal logs,Financial Times,5.9,p.3)。マレーシアとシンガポールは、ともにCITESに調印しており、マレーシアは、昨年七月、インドネシアのすべての丸太の輸入を禁止している。それにもかかわらず、グループの調査ではインドネシアから密輸されたラミンをEUや米国を中心とする国際市場で大量に売りさばいているという。ラミンは玉突き棒や額縁などに使われる硬材である。マレーシアは世界最大の熱帯木材輸出国であり、シンガポールは森林がないにもかかわらず、巨額の木製家具輸出産業を誇っている。

 先月、マレーシアの港に違法丸太を運ぶインドネシア船が1時間に32隻観測され、警察と税関を通過した。グループは、マレーシアの当局は何が起きているか完全に知りながら、見過ごしていると言う。グループによれば、毎年伐採される木材の80%が違法に伐採されたものであり、人員と政治的意志の欠如が不法伐採の取り締まりを困難にしている。

 ファイナンシャル・タイムズ紙は、グループがEUの行動計画は執行のメカニズムを欠いていることを恐れ、木材の没収と取引業者の告発を許す法律ができるまでは、ヨーロッパと米国の消費者による熱帯木材ボイコットだけが問題に取り組む方法だと言っていると報じている。同紙に対して、シンガポールの当局はノー・コメント、マレーシアの当局者とはコンタクトできなかったという。

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