手つかずの西アマゾン 石油・ガスの探査・開発が脅かす

農業情報研究所(WAPIC)

08.8.28

  アマゾン森林を脅かしているのは、世界の食料需要の増加で拡大する牧畜や大豆栽培だけではない。

 東部のブラジル・アマゾンとは異なり、未だ大部分生態系が手つかずで、多様な先住民族グループが外部との接触を自ら絶って暮らしている西部アマゾンには、大量の石油やガスが眠っている。石油やガスの世界需要の増大が、前例のない石油・ガス探査・開発活動を誘発した。

 地域における現在とこれから始まる石油・ガス探査活動の分布図を作り上げたアメリカ大陸天然林保護・再建活動グループ”Save America's Forests”の研究者が、環境・社会影響の悪化を防ぐための緊急の政策改善を要請している。

 Matt Finer et al,Oil and Gas Projects in the Western Amazon: Threats to Wilderness, Biodiversity, and Indigenous Peoples,PLoS ONE,August 13, 2008
  http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0002932

  研究者は、西アマゾンにおける石油開発の状況を量的に把握するために、政府筋の情報を総合した。政府が炭化水素(エネルギー 資源)活動のために指定し、多国籍企業を含むエネルギー 企業にリースできる森林区域は全部で180区域、68万8000㎢に及ぶことが分かった。現在、35の多国籍企業がそこで活動している。

 これらの区域はアマゾンの生物多様性が最も豊かな区域に重なる。また、多くの区域は、権利を認められた土地、自ら孤立を選ぶ人々が利用する区域の両方にわたる先住民領土とも重なる。エクアドル、ペルーでは、アマゾンの3分の2がこのようなブロックとなり、ボリビアとブラジル西部では未だ少ないものの、大規模な探査活動が急速に拡大している。

 研究者は、政府が企業に対し、伐採や狩猟に道を開かないように道路なしの探査を行い、先住民グループと協議し、自ら孤立を選ぶグループに属する土地に完全な保護を与えるように促すべきだと提言する。また、中立団体が、国レベルではなく、地域レベルの戦略的環境影響評価を行うべきだとも提言する。

 関連情報
 
燃料・食料需要の増大と地域・先住民の権利軽視が森林を飲み尽くす―RRI,08.7.16