農業情報研究所環境森林ニュース:2017年9月18

「森林バンク」で放置人工林整備 成長産業化目指す「農地バンク」の二の舞?

 「農業の成長産業化」のために「意欲ある担い手」に農地を貸し出す「農地バンク(農地中間管理機構)」の制度に倣い、林野庁が「森林バンク」を創設する。 

 日本の国土の3分の2を占める森林の約4割が人工林、戦後に植林された木が伐採期を迎えているが、零細な個人所有者が多く、木材の値下がりや地域の過疎化で伐採が進まず、手入れもされずに放置されている場合が多い。これを放置すると山林の保水力が低下し、ますます頻度と強度を増す豪雨や台風で洪水や土砂崩れが頻発することになる。 

 そこで、手入れされずに放置されているスギやヒノキなどの人工林を市町村が借り上げて集約、意欲のある林業経営者に貸し出す。市町村は、事業規模を大きくしたい木材生産会社などに手入れや伐採を委託。林道の整備や林業機械の導入は国が支援する。急斜面だったり、林道から離れていたりして引き受け手の見つけにくい森林は、市町村が無料で借りて管理する。そうすることで林業経営の規模拡大と環境保全の両立を目指すのだそうである。

 手に余る人工林、管理委託 林野庁「森林バンク」創設へ 朝日新聞 17.9.18

 結構なことである。しかし、「農地バンク」の二の舞になる恐れもある。それは2023年までに80%の農地を「担い手」に集めることを目指したが、2016年度末の担い手への農地集積率はたったの54%、農地バンク発足(14年)以来4%(年1.3%)上がっただけだ。202380%目標は絶望的だ。基本的には「農業成長産業化」など誰も信じられないような農業(経営)環境―米価暴落リスク、流通業界による買いたたき、自由貿易協定による価格破壊・・・―があるからだ。リスクは大規模経営ほど大きい。 

 林業についても事情は同じ、とりわけ近い将来に実現するとされる日欧経済連携協定(EPA)は日本の「林業成長産業化」(日本再興戦略2016)妄想などいとも簡単に吹き飛ばすだろう(林業の成長産業化 日欧EPAで責任重く 日本農業新聞 17.7.29)。「意欲ある林業経営者」も尻込みするほかない。それとも林野庁、コメ同様、万全の(?)セーフティ―ネットを講じるから恐れるな?これも信じる者は少ないだろう。