EU:新たな食品安全法が発効

農業情報研究所(WAPIC)

02.2.23 

 EU食品法に関する新たな中心的規則(EU:食品安全機関の設立に合意,02.1.22)が21日発効した(European Commission:Food Safety First set of farm-to-table food safety measures take effect,2.21)。これは、「農場から食卓まで」の包括的な一連の食品安全措置を定めるものである。これらの措置には、飼料と食品のリスクに関する新たな強化された迅速警告システム、飼料と食品に重大なリスクがありそうなときに欧州委員会に与えられる新たな緊急介入権限、既存の常設委員会のフード・チェーンと動物保健に関する単一の委員会への再編成、食品法に関する主要原則と食品法策定における透明性が含まれる。これにより、欧州委員会は初めて自身のイニシアティブでリスクに対処することが可能になり、バーン委員が言うように「食品問題がいつ、どこで生じても、迅速に、決定的に、有効に行動するための枢要な手段」を手にすることになる。Financial Times紙によれば、欧州委員会スポークスマンは「これは米国の食品医薬庁(FDA)の法的能力を越える」と言う。しかし、それは、EU法のなかに初めて「予防原則」を取り込んだことで、EUはこれを保護主義の手段として使おうとしているのではないかという域外諸国の反発を一層強める可能性がある。

 新たな迅速警報システム

 これは、各国の関係当局・新設の欧州食品安全庁(EFSA)・欧州委員会が構成するネットワーク内で、人間の健康・動物の健康・環境への直接的・間接的リスクの通報を義務づける。既存の食品に関する迅速警告システムに基づき、これを飼料部門やEU域外からの輸入飼料や食品にも拡張する。欧州委員会がこのシステムを管理し、即時の情報伝達を確保する。原則的には、EU加盟候補国、その他の域外諸国、国際機関もこのシステムに参加できる。EFSAは、特に、EU諸国の手段決定を助ける科学的・技術的情報を提供する役割をもつ。EU諸国の関係当局は、リスクが疑われる相当の根拠があるときに公衆に知らせるための適切な手段を講じなければならない。

 委員会の緊急権限

 EU産品または域外からの輸入品が人間の健康・動物の健康・環境に深刻なリスクをもたらしそうで、そのようなリスクがEU構成国により取られる措置により十分に抑えられないことが明らかな場合、欧州委員会が自ら、あるいは構成国の要請により、行動を開始することができる。状況の重大性に応じ、問題の飼料や食品の販売または使用を停止させたり、販売または使用に特別の条件を課したり、その他適切な措置を取ることができる。

 新たな常設委員会

 従来、EU諸国の代表者で構成される様々な常設委員会ー獣医委員会、食料品委員会、動物食物委員会、植物防疫委員会ーが食品安全問題に関する決定で中心的役割を果たしてきたが、これらの委員会は単一の「フード・チェーン及び動物保健に関する常設委員会」に再編される。新たな委員会は、食品安全措置の開発に関して欧州委員会を補佐する。この委員会は構成国代表者で構成され、欧州委員会代表者が議長となる。それは分野別の小委員会を設けることができる。

 予防原則

 この規則は、論争の多い「予防原則」を初めて法制化した。「予防原則」と題するその第7条は次のように述べている。

 「1.利用可能な情報の評価の後に健康に対する有害な影響の可能性が認められるが科学的不確実性が存続する特別の状況においては、一層包括的なリスク評価のためのさらなる科学的情報を待ち、欧州共同体において選択される高レベルの健康保護を確保するために必要な暫定的なリスク管理手段を採択することができる。

  2.前項に基づき採択される措置は、欧州共同体において選択される高レベルの健康保護を達成するために必要とされる以上に貿易制限的でなく、均衡あるものでなければならず、技術的・経済的な実行可能性及び考慮中の問題において合法的とみなされるその他の要因が顧慮されねばならない。これらの措置は、認められた生命または健康へのリスクの性質及び科学的不確定性を取り除き、一層包括的なリスク評価を行なうために必要とされる科学的情報のタイプに応じて定められる妥当な期間内に見直されねばならない。」

 このような予防原則の有効性の確保のためには、このような措置に対する国際的コンセンサスが必要であり、特に進行中のWTO新ラウンドでの承認を勝ち取らねばならないであろう。そこでは、予防原則は偽装された保護主義と批判する米国やケアンズグループとの厳しい交渉に直面している。

 関連ニュース
 Brussels gains new food safety powers,FT com,2.21

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