農業情報研究所


米国:食品を原因とする感染症が激減

農業情報研究所(WAPIC)

02.4.20

 19日、米国疾病管理予防センター(CDC)は、食品を原因とするサルモネラその他の細菌病が1996年以来23%減少したと発表した(Preliminary FoodNet Data on the Incidence of Foodborne Illnesses --- Selected Sites, United States, 2001,4.19)。食品を原因とする主要な四つの病気では、カンピロバクター感染が27%、リステリア感染が35%、サルモネラ感染が15%、O157感染が15%減少し、2000年以後、すべての大腸菌感染が減っている。

 ただし、これは10州の10の病気に関する予備的データに基づくもので、全体の動向として確認できるかどうか問題がある。しかし、当局者は現実の全体的動向を示すととらえている。米国農務省(USDA)は、これは、近年、食肉・家禽産業により実施された厳格なコントロール・システム(HACCP)の成果であるとしている(News Release:USDA Data Show a Reduction of Salmonella in Raw Meat and Poultry ,4.18)。

 しかし、消費者団体はこの傾向が今後も続くかどうか疑っているようである。19日付けのワシントン・ポストによれば、消費者団体は、現政権はクリントン政権時代に食肉・家禽産業に課された規制を後退させようとしており、この進歩が徐々に逆転するだろうと言っている。この後退を象徴するのが、次のようなサルモネラ基準をめぐる動きである。

 サルモネラ基準は、それを満たさない工場の閉鎖を命じる権限の根拠をなしてきた。この基準はサルモネラが低レベルの食肉はその他の細菌のレベルも低いという判断に基いている。それは、ファスト・フード店での食品汚染による死者が出たことへの対応として1990年代半ばに制定された新たな規制の核心をなすものであった。クリントン政府は、訴訟によりサルモネラ基準の遵守を強制すると明言していた。ところが、昨年12月、巡廻控訴裁判所がサルモネラは正常に調理すれば無害だとして、USDAは違反牛肉加工企業の閉鎖を命じる権限はないという判決を下した。以来、現政府は、サルモネラ基準に基づく工場閉鎖の権限は食品安全の確保のためには必要はないという立場を取っている。サルモネラ検査は工場に何らかの問題があること発見する手段であり、追加的監視の必要性を判断する材料にすぎないというのである。

 発表された数字が歓迎すべきものであることは間違いない。しかし、それは食品安全をめぐる論議を高揚させるきっかけとなるかもしれない。 

 関連ニュース
 Food Safety Report Ignites Angry Debate,The Washington Post,4.19
 Court Lessens Federal Power to Shut Down Meat Plants,,The New York Times,01.12.17

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