農業情報研究所


カナダ:養殖鮭、高度のPCB汚染、週1-3食以上は危険

農業情報研究所(WAPIC)

02.5.18

 カナダの研究者がブリティッシュ・コロンビア州の養殖鮭に高レベルのPCBsを発見、子供は週に1食を食べるのも危険というペーパーを環境化学の国際専門誌・Chemosphereに発表した(M.D.L. Easton et al,Preliminary examination of contaminant loadings in farmed salmon, wild salmon and commercial salmon feed,Chemosphere, Vol. 46 (7) (2002) pp. 1053-1074)。PCBsは毒性が非常に強く、特に免疫システム抑制や子供の精神発達の遅れにつながると見られている。

 この発見は、海岸沿いの養殖場で育てられ、他の水棲動物の加工残滓で作られたフィッシュミールのペレット与えられた養殖魚の汚染レベルを探る諸研究の一つに基づくものである。研究の結果、検査された養殖魚の大抵の汚染物質のレベルは野生魚に比べてはるかに高いことが分かった。養殖魚がもついくつかのPCBs毒性は野生魚の10倍にもなる。ペーパーは、世界保健機関(WHO)の基準により、養殖鮭は週に1食から3食以上は食べないほうがよいと推定している(現在、保健省は週に20から138食までは安全としている)。養殖魚の汚染レベルが高いのは、魚を肥育し、また成長を速めるための飼料にPCBsが混じっているためである。ただ、養殖鮭の水銀汚染レベルだけは野生鮭よりも低い。

 この研究結果は魚8、飼料5のサンプルによるもので、検査は予備的なものとされている。研究者は、この発見が養殖業全体に適用できるのかどうかを決めるために、一層の研究を要請するとともに、汚染レベルが高い地域の野生の鮭についても調べるべきだとしている。

 鮭の飼料、養殖鮭、野生鮭の汚染レベルは次のとおり。

汚染物質

鮭飼料

養殖鮭

野生鮭

有機塩素系農薬(ppt)
(DDT、ディルドリンほか)
 48,124  41,798  12,164
PCBs(ppt)  65,535  51,216   5,302
水銀(ppb)    19.4    29.3    49.5

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