農業情報研究所

HOME グローバリゼーション 食品安全 遺伝子組み換え 狂牛病 農業・農村・食料 環境 ニュースと論調

イギリス:肥料・農薬使用量は先進国中最高、動かぬ政府

農業情報研究所(WAPIC)

02.12.3

 12月1日付けのイギリス・「インディペンデント」が、経済協力開発機構(OECD)のレポートによればブリテン島の肥料・農薬使用量は先進国中最高で、様々な深刻な問題を引き起こしているが、政府の削減へ向けての取り組みは消極的で、敵対的でさえあるという記事を掲げている。

 OECDによるイギリスの環境パフォーマンス・レビューによれば、イギリス・ブリテンの農薬使用量は1km2当り0.58トンで、日本、イタリアより少なく、フランスと同じほどであるが、OECD平均の2倍、米国の3倍近い。そして、化学肥料使用量は1km2当り20.3トンで、他のいかなる主要OECD加盟国よりも多く、OECD平均の3倍にもなる。

 先週、環境・食料・農村問題省(DEFRA)は、「インディペンデント・オン・サンデー」に化学物質のレベルは「受け容れがたい」と語り、また下院委員会は、農業者と地主の農薬抑制自主協定は「混沌」状態にあると語っている。DEFRAは、最近の選挙後、環境に優しい農業の促進を掲げたが、肥料・農薬使用における農業者教育の手段変更が必要だと言う。地主リーダーは、農業者は経済的理由で自動的に最適量の化学物質を使用すると主張しているが、DEFRAは、実際には使用のレベルはカネの浪費であり、河川・地下水・飲料水を汚染し、「非常に深刻な問題を引き起こしている」と言う。肥料からの硝酸塩は子供を害し、胃癌を引き起こす可能性がある。農薬は癌と神経・免疫システムの問題につながっている。科学者は海洋生物の性変化の原因となると考えている。

 OECDは、政府が化学物質税の導入を考えるべきだと報告しているが、首相は自主的「パートナーシップ」を主張して、農薬課税計画を拒否した。しかし、先週、下院環境監査委員会は、パートナーシップはほとんど何も達成しておらず、僅かな実行計画も延々と引き延ばされていると報告した。環境保護団体・「地球の友」は、このスキャンダラスな状況は、農薬使用削減の必要性はそれほど高くないと繰り返している食品基準庁(FSA)から農業用化学物質への課税の導入に失敗した大蔵省まで、政府機関全体に後押しされたもので、野生動物と消費者の健康は、相変わらず化学企業の利益の下に置かれていると批判している。

 UK food tops chemicals league,Independent,12.1