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養殖鮭が高レベルのPCB汚染、米国環境団体が報告

農業情報研究所WAPIC)

03.8.4

 7月30日付のニューヨーク・タイムズ紙が報じるところによると、環境研究・勧告非営利団体の”Environmental Working Group”が東・西海岸の市場から購入した養殖鮭に高濃度のPCB汚染を発見したという報告を発表した。アメリカ人は、ツナ缶やエビについで鮭を大量に消費しており、その60%は養殖鮭である。栄養学者が勧め、食品医薬局(FDA)も好きなだけ食べてよいとしているが、この濃度では月に一回食べるだけでも癌のリスクがあるという。

 カナダと米国を含む5ヵ国から来た10のサンプルで検出されたPCBの濃度はFDAが1984年に設定したレベルは越えないが、環境保護局(EPA)がレクレーション漁業のために1999年に設定した指針のレベルを超えている。EPAの指針を適用すると、一サンプルの濃度は、2ヵ月に一回しか食べられないほどに高かった。他のサンプルは週一回の勧告のレベルを越えていた。グループはEPAの分析方法に従っており、以前にイギリス、アイルランド、米国で行われた科学的と認定される三つの研究も、同様に高レベルのPCBを発見している。これらの研究は、野生の鮭のPCB汚染のレベルは養殖鮭よりも低く、その理由は養殖鮭が魚油のレベルの高いフィッシュ・ミールを与えられることにあることを明らかにしている。PCBは脂肪に集中するからである。

 グループは、米国人の鮭の消費量からして、80万の人々の生涯の癌のリスクが養殖鮭の消費によって1万分の1以上増加し、1,040万の人々のリスクは10万分の1以上増加すると推計している。 

 問題はFDAとEPAの基準が大きく異なることであるが、EPAはその勧告が利用できる最善の科学を反映していると言い、FDA報道官も1970−80年代に遡るその基準の見直しを考えているという。

 なお、日本の厚生労働省の「平成13年度食品からのダイオキシン類(ダイオキシン及びコプラナーPCB)一日摂取量調査等の調査」の一環としての個別食品のダイオキシン類汚染実態調査でも、輸入塩鮭に群を抜いて高レベルのコプラナーPCBを中心とするダイオキシン類が検出されている。輸入塩鮭が養殖ものかどうかの区別はないが、全体のシェアでは養殖が圧倒的に多いことは確かである。

 Farmed Salmon Is Said to Contain High PCB Levels,The New York Times,7.30