英国:食品広告が子供の肥満を助長、食品基準庁が広告禁止等を検討へ

農業情報研究所(WAPIC)

03.9.29

 英国食品基準庁(FSA)が、子供の肥満に挑戦するために、子供向け食品広告の禁止あるいは制限を考えている。FSAは、食品広告と子供の食生活パターンの関係の調査研究を専門家チームに委嘱していたが、9月25日に研究結果の報告書(*)が発表された。ストラスクライド大学のハースティング教授とその研究チームが行なった研究は、子供が食品広告にどう反応するか、子供の食品選好に影響を与えるかどうか、もし影響があるとすれば他の要因と比べてどの程度か、影響は食品のタイプやブランドに及ぶのかどうかなどの問題に取り組んだものである。

 ハースティング教授は、「これは、この重要で複雑な問題に関する証拠の包括的で、極めて完璧なレビューである」、「販売促進活動と子供の飲食行動の関連に関する多くの重要な結論に達した」、「特に、それは、子供に対する広告は、子供の選好、購買行動、消費に影響を与え、これらの影響はブランドに対してだけでなく、食品のタイプに対しも見られる」と語っている。食品製造業者は、広告が消費を増加させることはない、ただブランド選好の変化を促すだけだと主張してきたが、このような主張が覆されたことになる。

 研究は、次にように極めて興味深い結果を明かにした。

 ・子供が一週間に食品広告に曝される時間が25分増えるごとに、スナックを食べる量が増え、2%余計なカロリーを摂取する。

 ・すべての子供向けテレビ広告の4分の3は食品広告で、これらの広告の95%は高脂肪・砂糖・塩分の製品に関するものである。

 ・子供向け食品広告のビッグ・ファイブは、砂糖入り朝食用シリアル、ソフトドリンク、菓子、塩味スナック、ファスト・フードの広告である。

 ハースティング教授は、「我々は分岐点にいる。この報告書は子供向け広告が消費を増やし、何を食べるか、何を欲しがるかに影響を与えていることを示す」と言い、製造業者と食品・飲料産業が問題に取り組み、論議に参加しないならば、強制措置が必要だと警告している。

 英国における肥満児の数は1982年以来倍増、肥満と分類される6歳児の比率は10%、15歳児の比率は17%に増えている。

 この報告を受け、FSAは、子供の肥満率上昇を抑えるために、広告禁止も含めた厳しい措置の導入の是非の検討に入る。 

 *Press release and notes to edtors:Food Standards Agency publishes review of evidence into link between the promotion of foods and children's eating behaviour.
 Review of Research on the Effects of Food Promotion to Children Part One: Main Report
 Review of Research on the Effects of Food Promotion to Children Part Two: Appendices

農業情報研究所(WAPIC)

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