ビタミンEサプリメント、効かないどころか心臓病リスクを高める可能性

農業情報研究所(WAPIC)

05.3.17

 「・・・ ビタミンE 400IU・・・」は、お得な100粒入りサイズです。・・・毎日の食事だけでは不足しがちな栄養素を補ったり、美容や健康に必要な栄養素を取りたい方に毎日の生活の中で手軽にお役立ていただきたい商品です。本品は1粒で400IU(268mg)のビタミンEがとれます」(IUはビタミンの生物学的効果を表す国際単位)。あるビタミンEサプリメント(栄養補助食品)の広告だ。従来の研究は、ビタミンEのような抗酸化物質は活性酸素による細胞の損傷と癌細胞の発生を防ぎ、あるいはコレステロール蓄積を減らして心血管病を減らすなどと示唆してきた。ビタミンEサプリメントは、人々の健康志向が高まるなかで消費が増えるサプリメントの主要商品の一つをなす。日本でどれくらい消費されているかは知らないが、米国では成人の約12%、2000万人が400IUのビタミンEピルを摂取、多少なりともビタミンEを含むサプリメントの利用者は8000万人になるという業界団体の報告がある。

 ところが、カナダのマクマスター大学のエヴァ・ロン博士率いる研究チームが、ビタミンE 400IUのサプリメントの毎日摂取によっても血管病や糖尿病の高齢者には癌や脳卒中、心臓発作を防止する効果はない、それどころか心臓病のリスクが高まるかもしれないという研究結果を発表した(*)。 少なくとも血管病や糖尿病を抱える高齢者(55歳以上)は愛用をやめたほうがいいかもしれない。

 研究の目的は、ビタミンEUサプリメントの長期的摂取が癌、癌死、主要血管病のリスクを減らすかどうかを調べることにあった。1993年から1999年まで、無作為に選ばれた55歳以上の心血管病患者と糖尿病患者9541人に、毎日、自然由来のビタミンE(400IU)とそのダミー製品(プラセド)を摂取してもらった。その結果、二つのグループの癌発生率、癌死の率、心血管病発症率には有意の差はないことが分かった。しかし、ビタミンEUグループは、心臓病のリスクが1.13倍(13%)高く、心臓病での入院も1.12倍(12%)多かった。この調査を終えたのち、それまでの死亡者と継続を拒否した者を除く3994人を対象とするフィローアップ調査を行ったが、この調査でも同様な結果になったという。

 この結果、研究チームは心血管病または糖尿病の患者においては、ビタミンEサプリメントの長期的摂取は癌または主要心血管病を防止せず、心臓病のリスクが増えるかもしれないと結論した。

 ただ、ロン博士は、「人々がパニックに陥るには及ばない、誰もが今、ビタミンEを摂取したために鬱血性心臓病になるとは思わない」、「もっと危険なのは、多くの患者がビタミンその他の自然薬を摂取しているから大丈夫と思っており、健康的な食事、体重、運動などの我々が知っていることを行っていないことだ」と言う。また、心臓に問題がある人々については、リスクを決定的に減らす別の薬物療法もあると言う(Vitamin E boosts risk of heart failure in some patients: Canadian-led study,Canadian Press via Yahoo!,.3. 15;http://news.yahoo.com/news?tmpl=story&u=/cpress/20050316/ca_pr_on_he/health_vitamin_e_heart_2)。

* Eva Lonn et al,Effects of Long-term Vitamin E Supplementation on Cardiovascular Events and Cancer,Journal of the American Medical Association,Vol293-No,11,March 16, 2005(abstract:http://jama.ama-assn.org/cgi/content/abstract/293/11/1338).

 関連情報
 ビタミンE大量摂取は死を速める恐れー新研究、04.11.11