エタノール副産物飼料で牛の大腸菌・O157 が倍増 カンザス州立大の研究

農業情報研究所(WAPIC)

07.12.6

  バイオエタノール生産の拡大も一因となって品不足と価格上昇が進むトウモロコシに代替する飼料成分として、エタノール生産の副産物であるDDGS(穀物蒸留粕)の利用が模索され、実際にも広がっている。エタノール産業は、畜産・食肉産業の批判をかわす手段の一つとしてこれを利用しており、これが飼料コストの上昇に喘ぐ畜産業の救世主となるかもしれないと期待する向きもある。

 ところが、なんと、DDGSで飼育した牛では、後腸中に存在する大腸菌・O157が大きく増加することをカンザス州立大学の研究者が確認したという。研究者は、「これは非常に興味ある観察で、食品安全性に関係した深い意味がある」と言っている。DDGSは、救世主どころか、消費者の安全性不信を煽り立て、命取りになるかもしれない。

 K-State Researchers Examine Connection Between E. coli & Ethanol,Cattle Network,12.5 

 トウモロコシ飼育の牛が草で飼育された牛よりも多くのO157 を持つことは既に知られている。トウモロコシの栄養価が濃縮されたDDGSでは当然のことかもしれない。研究者の3ラウンドにわたる試験で、このエタノール副産物を食べた牛では、エタノール副産物を含まない餌を食べた牛に比べ、O157発生率がほぼ2倍になることが示されたという。

 食品安全と動物の健康はカンザス州の優先研究分野で、1999年以来、この分野の研究に7000万ドル以上を注ぎ込んできた。研究者は今後数年、DDGSで飼育された牛で何故O157が多いのかの研究に焦点を当てる。牛の後腸に何らかの変化が起きる可能性がある、あるいはDDGSがバクテリアに栄養素を提供するのかもしれないという。

 今年の米国食肉業界は、O157汚染による相次ぐ大規模リコールに大揺れだった(米国のトップ牛挽肉製品製造業者 O157 汚染によるリコールに耐えられず事業撤退へ,07.10.9)。あるいは、DDGS利用の増大と関連があるのでは。その追究は、さらに興味ある結果をもたらすかもしれない。