農業情報研究所食品安全>ニュース:2018222

安全性未確認GMバクテリアが作り出す(味の素)飼料用アミノ酸 EUで廃棄騒ぎ 

  EUで承認されていない遺伝子組み換え体(GMO)を使ってフランスで製造された動物飼料添加物がヨーロッパで違法に流通している、これはEUの食品安全立法の欠陥を示すものだ。21日付のル・モンドがそう報じている。

 Des OGM interdits découverts dans des aliments pour animaux,Le Monde,18.2.21

 ル・モンド紙は独自に入手したドキュメントでこの事実を知った。最初の警告は、フランス競争・消費・不正防止局(DGCCRF)による押収後の2017928日にフランスで出された。以来、食品安全担当機関が大騒動に巻き込まれた。1020日にブリュッセルで開いた緊急会合でEU全加盟国に知らされ、問題の物質を検出するための調査がフランス、ベルギー、イタリア、ドイツ、ハンガリー、ブルガリア、ルーマニア等々で行われた。欧州委員会は119日、関係国に対し、二つのケースにおいてGMOから作られた非承認のバイオマスを加えた飼料が違法に動物に与えられていたと内密に伝えた。

 このバイオマスは死んだ遺伝子組み換えバクテリアから成る。それは反芻動物、豚、鮭の飼料への添加物として利用されるアミノ酸を産出するのに役立つ。ル・モンド紙が接触した欧州委はこれらの情報を確認、加盟国はこれら製品を撤去し、破壊しなければならないと明言した。ただし、欧州委はDGCCRFが製品を押収した企業の名前は伏せている。しかし、同紙の得た情報からして、フランスの農産食料産業の巨人・味の素に違いない。<発酵によるアミノ酸の世界一の生産者を自認する>この日本の企業グループは、アミアンとソンムに生産工場を持ち、大量の飼料成分を生産、ヨーロッパやトルコ、アジアにも輸出している。ただし、味の素は同紙の会見要請には応じなかった。

 問題はこれら製品(二種のバイオマス)の安全性だが、欧州委員会は<人の健康リスク>はないとしている。しかし、欧州食品安全機関(EFSA)はそれほど断定的ではない。味の素は20086月、そのヨーロッパでの販売許可を得るために、二つの製品の安全性評価を申請した。同紙によると、EFSAは、<消費者の安全性>については<結論できない>と推認、<利用者>(動物)の安全性については<重大なリスク>を喚起している。豚、反芻動物、鮭の飼料向けバイオマスは、鮭については最大で飼料の13%までの量をリスクなしで添加できるが、牛や豚については、どこまでが安全か決められない、と。EFSAの安全認証を得られなかった味の素は、輸出先をEU行き域外に振り向けたという。

 Des OGM interdits découverts dans des aliments pour animaux,Le Monde,18.2.21

 

 ところで、味の素のバイオマスが作り出すアミノ酸とはいかなるものなのか。味の素の自慢げな広告をご覧下さい(家畜の健やかな成長を促す飼料用アミノ酸 世界で高い評価を ... - Ajinomotoも)。 「味の素グループでは、食品や医薬品のためのアミノ酸だけでなくも製造しています。飼料用アミノ酸は、家畜に与える一般的な飼料穀物では不足しがちなアミノ酸を効率よく補うことが可能で、食糧・環境問題の解決にも貢献するものです」と、まるで地球と人間の救世主のごとしです。ただ、日本での安全性評価は未だのようです。

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