中国:WTO加盟で穀物農民が早くも苦境

農業情報研究所(WAPIC)

2002.1.29

 中国がWTOに加盟して2ヵ月足らず、東北農民は早くもその深刻な影響を感じている。

 1月29日付けのSouth China Morning Post”紙によれば、中国最大の穀物輸出地域をなす吉林省では、例年のような大規模な輸出契約がまったく成立せず、穀物ー80%はコーンー在庫は700万トンに膨れ上がっている。国内価格は国際市場価格より60%も高く、主要なバイヤー(家畜飼料としてコーンを使う食品会社)はWTO加盟により外国からの購入が容易になったためである。

 価格は低下、農民所得は深刻な影響を受け、賃金不払いも増えている。

 WTO加盟に伴い、中国政府は、輸入関税1%でのコーンの輸入枠を2000年につき450万トンとし、2004年には720万トンに増やすことに合意した。この量を超える輸入コーンには77%の関税が課されるが、これも2004年には65%に引き下げられる。非国家貿易企業に対しても今年は25%の輸入枠が与えられ、2004年にはこれが40%まで増えことになっている。

 吉林の最も重要な穀物生産地域であり、昨年は225万トンを生産したYushu Cityでも、昨年末の在庫は235万トンの達し、貯蔵費用の調達が難しくなっている。穀物倉庫や流通企業で働く1万2000人の賃金の未払いも生じており、ある者は8ヶ月も賃金を払われず、最低限の生活のための給付を受けている。

 ある穀物農民によれば、「我々農民は毎日テレビを見、新聞を読んで国際価格と中国の農業政策を追いかけている」。

 Grain farmers already feeling WTO squeeze,SCMP.com,02.1.29

 中国農村は激動期に入りつつあるようだ。前日の同紙は、「今の役人は農民からカネを取り上げるほか何もしない」と毛沢東の再来を望む農民の声を伝えている。重税に苦しみ自殺する農民が増え、改革を求める声が高まっている。ある者は、中央政府は農民の財政負担を軽減し、農村政府を簡素化するというが、問題の根本的原因ー日々の生活に影響を与える決定への農民参加の欠如ー取り組むことが必要だといっている。

 Squeezed farmers nostalgic for Mao,SCMP.com,02.1.28

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