フィリピン:ケアンズ・グループからの離脱の構え

農業情報研究所(WAPIC)

2002.2.11

 2月10日、Philppine Daily Inquirer紙が伝えるところによると、フィリピンはラジカルな農産物貿易自由化を主張してきたケアンズ・グループからの離脱の構えをみせている。直接のきっかけは、EUのツナ缶関税引き下げを目指す戦いでグループの支援を得られず、孤立を強いられたことである。

 マニュエル・ロハス貿易産業相は、農産物貿易自由化を求める点ではグループと共通の関心をもっているが、すべての利害が一致するわけではないことが分かったという。フィリピンは世界最大のツナ缶輸出国の一つであり、EUへの輸出シェアは米国(38%)、シンガポール(16%)に次ぐ15%であるが、EU市場は成長中であり、ツナ缶製造者の関心は高い。

 EUは旧植民地諸国で構成されるアフリカ・カリブ・太平洋(ACP)諸国に対してツナ缶関税をゼロとすることを提案しているが、そうなれば24%の関税を課されているフィリピンの立場は非常に不利になる。そのためにACP諸国と同等の待遇を要求してきた。しかし、大部分のケアンズ・グループ諸国はフィリピンのこのキャンペーンを無視した。

 ケアンズ・グループは、前回の多角的貿易交渉ーウルグアイ・ラウンドーの始動に際し、米国とEUが農産物貿易交渉を主導するのを防ぐために、1996年に形成された。先進国であるカナダ・オーストラリア・ニューシーランドと南米・アジアなどの穀物・農産物輸出途上国で構成されている。ロハス貿易産業相は、「グループには豊な国が含まれるから、我々はケアンズ・グループの望むことに盲目的に従ってはならない」という。

 なお、EUは、新たな多角的交渉ードーハ・ラウンドーを立ち上げるために、最終的にはツナ缶問題に取り組むことを約束した。フィリピン・タイ・EUは、来年4月までに問題を解決することに合意している。もし妥協ができなければ、EUはWTOに仲裁を求めることになる。

 Philippines poised to quit agriculture lobby group,Philppine Daily Inquirer,02.2.10
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 Thailand renews EU negotiations on tuna exports,FT com,02.2.11

 

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