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フィリピン:中国等からの野菜の洪水、関税引き上げを考慮

農業情報研究所(WAPIC)

03.1.21

 17日付のフィリピン・INQ7.net が伝えるところによると、関税委員会は、野菜輸入関税をWTOの拘束最大税率である40%まで引き上げる(現行税率は7%)という農民グループの請願について公聴会を開く。農業省に支持されたこの請願の受け入れは、中国と台湾からの野菜の水門を閉じようとするアロヨ大統領政府の最新の動きをなすものである。大統領は農業省に対して野菜輸入許可を出すのを止めるように、植物産業局に対して植物検疫証書の交付を停止するように命じた。

 農民グループが40%関税を求める野菜には、ネギ類、カリフラワーとブロッコリ、レタスとチコリ、人参・カブ・サラダ用ビートの根・ラディッシュなどの根菜類、キュウリ類、エンドウマメ、インゲンマメ、セロリ、トウガラシの実、ホウレンソウ、保存野菜、柑橘またはメロンの皮、ショウガが含まれる。

 これらの野菜の価格は、密輸とWTOでの約束に沿った関税引き下げにより、最近年に暴落した。野菜関税が1999年に12%に引き下げられて以来、野菜輸入は年1万sから2000年には110万s、2001年には200万sに急増したという。農業省は、野菜を割当制限により保護される「センシティブ商品」のリストに載せることも推進する。 

 ところで、敢えてコメントすれば、このような関税率引き上げにより、フィリピン野菜農民の苦難は一時的には緩和されるかもしれない。しかし、フィリピンも含むアセアン諸国は、今や中国との自由貿易協定交渉に乗り出している。その実現の暁には、こうした一時凌ぎもできなくなるであろう。メキシコは、北米自由貿易協定(NAFTA)の規定による今年初めからの鶏肉等の関税撤廃が国内産業にもたらす危機を回避するために、NAFTAの再交渉を求めている(米国、メキシコ、チキン関税維持の可能性メキシコ:カンペシーノウ、生計への恐怖)。アジアでも同様な事態が起きるのだろうか。多角的貿易自由化交渉が停滞するなか、地域貿易協定への流れが加速、誰も止めることのできない勢いを得ている。しかし、農産物の扱いをめぐる困難は、既存協定さえ脅かす圧力をもち得ることに注意しておきたい。

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