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メキシコ農民、NAFTA再交渉を要求、何のための自由貿易協定?

農業情報研究所(WAPIC)

03.1.22

 メキシコがテキサス、カリフォルニアなど、米国の8つの主要鶏肉生産州からの鶏肉輸入を禁止した。表向きは、これらの州におけるニューカッスル病勃発が理由である。しかし、これは、政府が鶏肉生産者の激しい攻撃を一時的にかわす絶好の機会として利用したと勘ぐられても仕方がない措置でもある。

 10年前に、異例のスピードで調印に漕ぎつけた北米自由貿易協定(NAFTA)の下で、今年1月からは鶏肉や豚肉を含む広範な農産物の輸入関税が撤廃されることになっていた。しかし、これが現実のことになれば、メキシコには米国産鶏肉が溢れ、米国との競争に耐える準備ができていないメキシコ鶏肉産業が崩壊に危機にさらされる。メキシコ生産者グループは、昨年来、政府に補助金を求めるとともに、NAFTAの再交渉も要求して激しい戦いを挑んできた。年末年始の20日間の休戦協定が成立したものの、休戦が明けるとともに、メキシコ最大の農業者・農業労働者組織の一つである全国農民同盟は、2月5日の「全国スト」を呼びかけ、すべての主要高速道路、港湾、国境通過地点を封鎖する構えでいる。

 今のところ、NAFTAの緊急条項を使用して、関税撤廃を3年から5年延期するメキシコ・米国間の妥協案が模索されている。しかし、これをめぐっては、メキシコ政府部内でも対立がある模様で、フォックス大統領も、再交渉は可能だが、メキシコの先行きを一層悪くすることを恐れているという。

 いかなる自由貿易協定交渉においても、農産物の扱いは最大の難問をなしてきた。全米自由貿易協定(FAAA)でもそうなるであろうし、これから始まる米国・オーストラリア交渉では、この問題のために、協定成立自体が危ぶまれる。容易な妥協は、実施段階に至って再交渉の問題まで浮上させるであろう。メキシコがその好例である。

 農産物と自由貿易協定の問題、これについては、未だ、誰も理想的解決策を見出せないでいるようだ。

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