ノルウェー農協、モザンビーク農民から非GM大豆調達へ―WTO関税削減には反対

農業情報研究所(WAPIC)

03.12.13

 アフリカからの報道(*)によると、モザンビーク北部・ナンプラ州の3000の農民が共同、ノルウェーの農業購買販売組合・Falleskjopetに大豆を販売する。このノルウェー農協とモザンビークの協同組合・IKURUが、最近、1,500トンの大豆の輸出収入をナンプラ農民に保証する協定に調印した。Falleskjopetは農民が土地・水・労働力をもつことを確認、市場の保証に踏み込んだという。

 同農協の声明によると、ノルウェー農民が保証された市場と価格を提供することにより、モザンビーク農民は投資・改良、国の食糧安全保障の確保を可能にする所得を手にすることになる。輸出市場の開放は自然豊かなこの国の能力の開発を助けることになる。モザンビーク農民はそれぞれの農地の4分の1で大豆を栽培、信用貸しで種子と肥料等の生産資材を与えられる。普及サービスも提供され、栽培シーズンが始まる前に保証価格が決められる。これはパイロット事業で、成功すればさらに購入を広げる。事業が発展すれば、他の飼料作物も追加される。

 Falleskjopetはノルウェー最大の飼料生産者で、ノルウェーとアフリカの小農民の同盟を形成することで、さらに事業の基盤を固めることができると見ている。ノルウェー農民は、苛刻な気候条件や労働・機械の高コストのために、世界市場での競争力を欠いている。遺伝子組み換え(GM)作物ゼロに向けての組合の政策のために、競争力は一層阻害される。世界市場で非GM作物を見つけ出すことは難しい。だが、モザンビークで生産される作物はノルウェー農民への非GM品の供給を保証する。

 同農協は、この事業が成功するためには、最貧国(後発途上国)に与えられる現在の貿易・関税特恵が維持されねばならないと言う。WTO交渉で関税が一律に大幅削減されれば、最貧国農民が享受する特恵マージン(特恵関税率と一般関税率の差)が減り、世界市場で競争できなくなる。目下のWTO交渉で、EUの特恵を享受するアフリカ・カリブ・太平洋(ACP)諸国や後発途上国は、この問題に配慮するように強く要請してきた。ノルウェー農協は、それが自分たちの利益にもなると見ているわけだ。農産物輸出大国がノルウェー市場に参入、モザンビーク農民を締め出せば、非GM品調達が困難になる。

 報道は、専門家の意見は、米国やEUで農民に与えられる保護が市場を歪曲、高度な競争力をもつアフリカ生産者の貧困化を招いているとか、アフリカの貧困を招いているのは関税よりも多くの熱帯農産品の過剰生産、従って価格暴落を招いている無規制な国際市場であるとか分かれているが、はっきりしているのは、この事業がナンプラとノルウェー双方の農民に大きな利益をもたらすであろうことだと言う。

 この事業に対する最大の脅威は、関税削減によってノルウェーのような国に安価な商品を売り込もうとする農産物輸出大国、途上国にGM作物を強要するバイテク多国籍企業とこれを後押しする政府からくる。それは確かなことだろう。

 *Nampula Farmers to Sell Soybeans to Norway,AllAfrica.com(from Agencia de Informacao de Mocambique ),12.11

農業情報研究所(WAPIC)

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