インド通産相、WTO農業交渉でG20拡大を目指す

農業情報研究所(WAPIC)

04.5.25

 インドのカマル新通商産業相がWTO貿易交渉、特にセンシティブな農業分野で攻撃的な役割を果たす、途上国G20グループを維持するだけではなく、同盟の輪を広げると言明した。The Hindu紙によると(Kamal Nath plans to expand G-20 role at WTO,The Hindu,5.25)、同紙に対し、G20グループで主導的役割を演じるだけでなく、その拡張を目指す、農民の利益を護るためにインドが必要とするセンシティブな農業分野で他の途上国と連携することは死活的に重要と語ったという。

 G20グループは、WTO貿易交渉がもたらす協定の大枠を定めるはずであった昨年9月のカンクンWTO閣僚会合に先立ち、農業補助金削減問題と中心とする米欧の主張に対抗すべく、インド、ブラジル、中国、南アフリカなどが形成したもので、その出方がドーハ・ラウンドの行方を決すると見られている。交渉前進の最大の障害の一つである農業交渉で、EUが最近、米国等と相互主義的に輸出補助金全廃の用意があると提案、米国もある程度呼応する姿勢を見せていることから態度を軟化させてきた。残る問題は関税削減等の市場アクセスだと、農産物輸出国で構成するケアンズ・グループと連携、近々米欧案に対抗する独自の関税削減案を提案しようとしている。米欧もこれを待ち、7月末の大枠合意に期待をかけている。

 ところが、G20の中心メンバーであるインドの総選挙で、予想外の政変が起きた。新政府が交渉方針を固めるまでには時間がかかる。米国は、G20とケアンズ・グループの新提案が、加盟国におる検討のために、遅くとも今月中には出ることを期待している。この目算が狂いそうになってきた。

 新通産相は、2004-05年の輸出・輸入政策決定のための産業との協議を今週から始める。新政策の発表は6月末から7月始めになるという。新提案はその後でなければまとめられないだろう。インドの方針次第では、それも難航するかもしれない。新通産相は、差し当たり新政策の具体的内容については触れていない。ただ、新輸出・輸入政策は、サービス輸出の促進とともに、農業・農村部門の雇用創出と振興を優先するという。農産物輸出は貿易業者ではなく、農民を助けることに焦点を置き、農民により妥当な輸出価格を保証する必要があると強調する。それが関税削減案にどう影響するかは未だ分からない。展望が見え始めた農業交渉の行方に不確定要因が加わった。

農業情報研究所(WAPIC)

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