農業情報研究所グローバリゼーション農水産物・食料品貿易ニュース:2011年11月19日

WTO紛争処理パネル 米国の食肉等原産国表示規則は違法 脅かされるWTO加盟国の食品安全

 WTO紛争処理パネルが11月18日、米国の食肉製品原産国表示規則(COOL)は世界貿易ルールに違反し、農産物貿易を阻害するというカナダとメキシコの申し立てを認め、米国に対し、WTOの下での義務に沿うように規則を改めることを命じた。

 Panel report out on “US-COOL” dispute,WTO,11.11.18
 http://www.wto.org/english/news_e/news11_e/384_386r_e.htm

 カナダとメキシコは2008年12月、米国小売業者が販売する牛肉・豚肉・鶏肉・子羊肉・山羊肉や一部生鮮食品について原産国表示義務を課した2008年食料・保全・エネルギー法の規則は米国への輸出に不当な(差別的)コストを強要するものとWTOに不服を申し立てた。18日のパネル報告は、カナダ、メキシコのこのような言い分を認めたものだ。

 これを受け、米国通商代表部(USTR)は、「パネルが食肉製品の原産国表示を要求する米国の権利を確認したことを歓迎する。パネルは米国がこれを具体化する方法については同意しなかったが、我々は小売レベルで購入する食肉製品の原産地について消費者に正確で適切な情報を提供することを約束する。これに関して、我々、パネルの決定に対す上訴も含むすべて選択肢を考えている」と発表した。

 Statement by the Office of the U.S. Trade Representative in Response to WTO Panel Decision on Country of Origin Labeling,USTR,11.11.18

 この判決の影響は米国だけではなく、牛肉、果実野菜、蜂蜜、オリーブオイルに原産国表示を義務づけ、これを生鮮豚肉、羊肉、山羊肉、鶏肉にまで拡張しようと計画しているEUをはじめ、生鮮食品・畜産物の原産地表示が義務づけられている日本を含む多くのWTO加盟国に及ぶ。消費者は、安全な食品を選ぶための一つの手段である原産国を選ぶ権利を失う恐れがある。

 米国のCOOLは、食品安全というより国産品愛用を促進を狙ったものであることは明らかであった。ただ、これが食品安全にかかわることも事実である。TPPによる関税撤廃やBSE規制の緩和で 「根拠なき”安全”」な米国産牛肉が日本市場に溢れても(TPP参加で大量流入?米国産牛 根拠なき「安全」 BSE規制 政治的思惑で緩和 東京新聞 11.11.18 28面参照―筆者への取材に基づき、佐藤圭記者がまとめた記事です)、日本の消費者はその購入を回避する手段を持たないことになる。

 米国が上訴するのかどうか、その結果はどうなるのか、注意深い監視が必要だ。

  関連ニュース
 WTO panel favours Canada, Mexico on U.S. label rules,Globe and Mail,11.18
 U.S. Country-of-Origin Food Labeling Rules Harm Commerce, WTO Judges Rule,Bloomberg,11.11.19