農業情報研究所グローバリゼーション農水産物・食料品貿易ニュース:2013年11月15日

農水省がコメの関税率を778%から280%に修正? 国際価格大幅下落の現在にはまったく不釣り合い

 日本経済新聞によると、「コメ(精米)を輸入する際に1キロ当たり341円としている関税について、農林水産省が関税率換算で778%としていた見解を「280%」に修正したことがわかった。コメの国際相場が大幅に上昇する一方、国産のコメ価格は落ち着いており内外価格差が縮小している。環太平洋経済連携協定(TPP)の関税交渉にも微妙な影響を与えそうだ」とのことである。

 この換算率変更の根拠は次のとおりだ。

 778%は2005年のWTO交渉時に、当時のコメ国際相場を1キロ44円弱とし、341円を44円で割って算出しものだ。ところが、「世界の人口増や新興国の経済成長を背景にコメの需要は拡大している」とかで、「政府が昨年、09年のコメの国際相場を調べたところ、1キロ当たり122円が新基準として妥当と判断した」というのである。そうすると、341円の関税は関税率に直すと341/122で280%になるというのである。

 輸入米関税「778%」から「280%」に 農水省が見解修正 日本経済新聞 13.11.15

 新聞の言うことだからそのまま信じていいかどうか分からないが、もしこれが本当だとすると、現在の状況にまった当てはまらない。

 通常、国際価格の標準として使われるタイ米のバンコク輸出価格は、06年から08年半ばまでの間に3倍にも高騰した。以後急落したが、09年から13年(今年)4月頃まで、なお05〜06年レベルの倍ほどにとどまっている。しかし、急落が始まっても長い間このレベルにとどまったのは、市場価格の数十%も上回る価格で買い入れるタイ政府の米価保証政策のためである。この間、生産を大きく伸ばしたベトナムやインドはタイの半値ほどで輸出、とうとうタイを米輸出世界一の座から引きずり降ろしてしまった。今の国際価格の指標としては、タイよりもインド・ベトナムの輸出価格を取る方が妥当であろう。事実、人為的価格維持の負担に耐え切れなくなったタイの輸出価格も、今年はインドやベトナムのレベルに急接近している(参照:国際米価:タイ輸出価格の推移と国際比較

 インド・ベトナム並みの価格、すなわち06年にはじまった急騰以前の価格への国際標準化は、09年からとは言わないが、ベトナムとインドの輸出がタイを大きく上まわる至った11-12年には始まっているいると考えるべきである。

 タイ、ベトナム、インドの米輸出量 (USDAによる。1000トン)

  2009/10年 2010/11年 2011/12年 2012/13年
タイ 9047 10647 6945 70000
ベトナム 6734 7000 7717 7200
インド 2228 4637 10250 10500

 ということは関税率計算の基準となる価格は、遅くとも12年にはもとももと(05年)のレベル近くまで下がっているということである。譲ってホワイト100%タイ米の現在の輸出価格トン450ドルを取ったとしても、これはキロ0.45ドル、円換算で45円ほどにしかならない。この輸出価格は下がりこそすれ、当分急騰することもありそうにない。122円はいかに高もすぎる。この基準値は早急に改めねばならない。