農業情報研究所


国連の新たなデータ、アフリカのエイズの破滅的影響を浮き彫りに

農業情報研究所(WAPIC)

2002.6.28

 25日、HIV/AIDS国連プログラム(UNAIDS)がアフリカのエイズに関するデータを発表、エイズがアフリカの社会と経済に破滅的影響を及ぼしている実態を明かにした(UNAIDS RELEASES NEW DATA HIGHLIGHTING THE DEVASTATING IMPACT OF AIDS IN AFRICA )。

 今日、2,800万のアフリカ人がエイズウイルス(HIV)に感染しており、いくつかの国では成人の30%以上が感染している。UNAIDSの常任理事のDr. Peter Piotは、「教師から兵士、農民に至るアフリカ社会のあらゆる要素がエイズに攻撃」されており、「HIV/AIDSの破滅的影響はアフリカの開発を数十年後戻りさせている」と言う。

 HIV/AIDSは既に脆弱なサブ・サハラ・アフリカの市場における経済的安定性を急速に弱化させている。既に、サブ・サハラ・アフリカの経済成長率は、エイズのために4%低下している。最悪の国では、労働生産性は50%も落ちている。ザンビアでは、管理部門の死者の3分の2ほどの死因がエイズによるものと見られる。いくつかの厳しい影響を受けた国では、2020年までに労働力の25%がエイズで失われるであろう。

 農村地域では、エイズによる700万の農民の死で、農業産出が厳しい損害を受けている。ブルキナ・ファソの農村家庭の5分の1が、エイズのために農業労働力を失い、あるいは農場を放棄さえしている。農業労働力が減ったために、家族はしばしば農場規模を縮小したり、栄養価や市場価値が低い非労働集約的作物に転換することを余儀なくされている。

 同時に、多くの国で、効率的開発の前提である国家安全保障もエイズのために弱体化している。これらの国の国防省は、兵士の平均20ー40%がエイズウイルス感染者であると報告しており、HIV/AIDSが10年以上にわたり存在してきた国では50ー60%に達する。

 政府の市民サービス能力も、予算縮小と公務員のエイズ死のために低下している。例えば、ボツワナでは、政府は、エイズのために、2010年までに公的歳入の20%を失うと予想される。ケニアでは警官の死の4分の3はエイズによるものとなっている。保健・福祉・司法のような基本的サービスの躓きが、貧困・脆弱な家族を最悪の状態に追い込んでいる。

 Dr.Piotは「アフリカにおけるエイズに関する事実は厳しいが、希望はある」、いくつかの国は適切な政府支援の国家エイズプログラムで病気の阻止に成功しており、「これらの努力がサブ・サハラ・アフリカのすべての人に達するように拡張されねばならない。エイズへの投資は千倍の応報を受ける」だろうと語っている。

 関連情報
 世界銀行:エイズのためにアフリカの教育の進歩が失速(ニュースと論調、2002年5月)
 
知的所有権:炭そ菌テロ=国家的緊急事態、エイズ=?,01.10.23

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