農業情報研究所

HOME グローバリゼーション 食品安全 遺伝子組み換え 狂牛病 農業・農村・食料 環境 ニュースと論調

ボルドー・ワインを河に流す米国市民、世界は対立と分裂に進む?

農業情報研究所(WAPIC)

03.4.26

 4月26日付の「ファイナンシャル・タイムズ」紙の22頁に、ある意味では米英軍によるイラク侵攻・爆撃の映像よりも恐ろしい写真が掲載されている。米国・アトランタの光景である。不気味な笑顔の男女が、ボルドー産のワインの栓を抜き、逆さにして中身を河に捨てている。アメリカの愛国主義表現の新たな形態なのだそうである(US vintage of wrath pales beside Bordeauxs real ills,Financial Times,4.26,p.22)。米英による国連の同意なしでのイラク侵攻に徹底的に抵抗したフランスへの報復がこのような形で現われている。

 ボルドー・ワインの値段は、未だ下がりっぱなしではないが、その最大の購入者である米国の仕入れ商人はシャトー所有者に大幅な値下げを迫っているという。厳格な品質管理で世界一の評判を勝ち得たボルドー・ワインも、いまや格安の新興ワイン生産国のワインと同列に置かれようとしている。これはボルドー・ワインへの攻撃だけでは収まらないであろう。それは、様々な食べ物の品質を世界に誇るフランス農産食料品産業にも及ぶであろう。それは、農産食料品貿易でフランス貿易黒字の3分の1近くを稼ぎ出すフランス経済への攻撃であり、グルメ・フランスの文化に対する攻撃でもある。米国の思惑とは反対に、イラク侵攻はかくも世界を分裂させつつある。