欧州委員会 グローバル化の悪影響を受けた労働者を助ける基金創設を提案

農業情報研究所(WAPIC)

06.3.3

 欧州委員会が3月1日、グローバリゼーションの悪影響を受けた労働者を賃金手当、新しい仕事を求めるための職業再訓練や様々な具体的支援によって助けるためのヨーロッパ・グローバリゼーション調整基金(EGF)の立ち上げを提案した。年々5億€(約700億円)の基金が、一括払いの個人援助を通じ、特に世界貿易パターンの変化により打撃を受けた地域や部門の5万人までの労働者を助ける。

 Proposal establishing the European Globalisation adjustment Fund
 http://europa.eu.int/comm/employment_social/news/2006/mar/com06091_final_en.pdf

 Press release:Commission proposes up to €500 million per year for a new European Globalisation adjustment Fund to support workers,3.1
  Memo:European Globalisation Fund,3.1

  欧州委員会は、その背景と意図を次のように説明する。

 経済の国際競争への開放は、経済のダイナミズム、競争、高質な職の創出により新たな機会をもたらす。グローバリゼーショにかかわるEUの政策は、成長・職業戦略(リスボン戦略→http://europa.eu.int/growthandjobs/)に示されているように、加盟国や市民が技術革新や世界市場の機会から利益を刈り取るのを助ける積極的対応を基本としてきた。

 しかしながら、貿易の開放とグローバリゼーションは、競争力が劣る部門での職の喪失を不可避的にする。このような貿易に関連した調整の結果として余剰となった労働者への支援が必要だ。新たな基金の目的は、このような支援を可能にすることだと言う。

 報道発表によれば、バローゾ欧州委員会委員長は、「グローバリゼーション調整基金は、貿易調整余剰により厳しく、個人的に影響を受ける人々へのEUの連帯を表すものだ。この方法で、それは市場開放の悪影響に対する適切で、有効な対応を刺激することになろう。我々は競争的な、しかしまた公正なEUを望むから、基金は余剰になった労働者が仕事に戻るのを助ける」と言う。

 また、ヴラジミール・シュピドラ雇用・社会問題・機会均等担当委員は、「グローバル化された経済においては、遺憾ながら特定部門の一部労働者は職を失う。EUが対外貿易にかかわる決定を行うのだから、このような貿易の変化のために職を失う労働者が変化する経済環境のなかで忘れられ、無視されないように保証するために、この新たなEGFを通して責任を取るのは論理的だ」と言う。

 EGFは、EUの連帯の証(あかし)として、国・地域・地方レベルでの加盟国の努力を補完する。この一括払いの援助には、求職支援、個人の訓練、企業家精神の促進、自営業支援などが含まれる。また、訓練に参加する人々に対する手当や50歳以上の労働者のための補完賃金手当のような、現に職に就いている労働者に対する一時的な追加手当も利用することができる。これらの措置は、中小企業も含む多国籍または国レベルの企業によりレイオフ(一時解雇)された労働者が新たな仕事を見つけ、続けることを助ける。これは18ヵ月にわたって実施される。

 昨年5月に発表されたEUの調査報告では、フランス人の71%がグローバリゼーションは雇用に悪影響を与えると見ており、このような見方はアイルランド、イタリア、スウェーデン、英国、デンマークを除くすべての国で優勢であった(ヨーロッパ人はグローバリゼーションをどう見ているかーEUの調査報告,05.6.2)。グローバリゼーションにより広がるEU市民の雇用不安がEUレベルの行動を促したと見ることができよう。