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欧州議会、カンクン閣僚会合に向けて決議

農業情報研究所(WAPIC)

03.7.4

 EUの欧州議会は、3日、9月にメキシコ・カンクンで開かれるWTO閣僚会合に関する意見を表明する決議(1)を採択した。貿易担当のパスカル・ラミーも、これは、「市場アクセスとルール・メイキングの両方に関する」欧州委員会の交渉の立場を確認するもので、カンクン会合の準備で決定的な時期にEUの交渉担当者に特に価値ある支持を与えると歓迎している(2)。

 決議は次の諸点に焦点を当てている。

 ・開発に関しては、先進国が、特別かつ異なる待遇を含む工業・農産物自市場アクセスの分野と[ウルグアイ・ラウンド約束の]実施問題で途上国に大いに実質的なオファーを行うこと。交渉の成果は途上国における成長・開発・経済機会の増進の実現を保証せねばならず、技術支援の重要性も強調。

 ・安価な薬の途上国への輸出品がヨーロッパに還流するのを防止するあらゆる必要な措置が取られねばならない。

 ・農産物の市場アクセスでは、、非貿易関心事項に関連した国内補助を除き、輸出補助と国内補助のすべてのWTO加盟国による、廃止をめざした削減が必要である。共通農業政策(CAP)改革の観点から、すべての先進国、特に米国に対し、EUの約束に合わせることを要請する。

 ・工業製品については、高率関税、加工度に応じて関税率が高まる「タリフ・エスカレーション」、非関税障壁に取り組むこと。後発途上国に有効な特恵を与えることが不可欠。

 ・特に「予防原則」に関して、誤った解釈や解釈の違いを回避するために、その意味をGATTの枠内で明確にする必要がある。

 ・知的所有権の貿易関連側面(TRIPs)では、農村開発に寄与する商標[地理的表示の重要性]を強調、これら産品の通知と登録のシステムの確立に向けて圧力をかける。

 ・通報義務を強化することで一般的補助金の透明性を確保、偽装された研究開発補助金・国家統制企業・ローカルコンテンツ補助などを律する。

 ・途上国の正当な関心に取り組むことを保証しつつ、いわゆるシンガポール・イシュー(競争政策、投資政策、貿易円滑化、政府調達の透明性)に関する交渉を正式に開始することを支持。

 ・基本的労働基準をWTOの貿易政策に含めることに合意するように求める。

 ・常設の紛争処理パネルの設置、紛争処理機関の裁定に従わない場合の補償措置発動を容易にすること、途上国の紛争処理システムへのアクセスをより安価にし、容易にすること。

 ・WTO加盟国のレベルとWTO議会の創設の両面でWTOの民主的アカウンタビリティーと透明性を強化すること。

 この決議に対し、EU農業団体連合会(COPA)とEU農協連合会(COGECA)は早速、国内補助での大幅はEU農民の非常に厳しい結果をもたらすと反論した(3)。CAP改革によるEU農民の貿易歪曲的補助金の大幅な削減の努力は、貿易相手に同等な努力を求めねばならないし、特に米国にはマーケッティング・ローンや輸出信用の削減を求めねばならないと強調する。途上国に関しては、価格を低落させ、市場を破壊する輸入から市場を保護するという農民の希望は理解し、特別かつ異なる待遇を支持するが、この待遇は農業の観点から真に「途上」の国に与えられねばならないと言う。基本的には、無分別な自由化はEU農民にも途上国農民にも福祉を確保するものではなく、米国やケアンズ・グループの強力な輸出志向農業に利益をもたらすだけだと主張している。

 (1)Preparations for the 5th World Trade Organisation Ministerial Conference ,7.3
 (2)EU-WTO: Pascal Lamy welcomes European Parliament resolution on the Road to Cancun,7.3
 (3)More to be done to preserve the European model of agriculture and the Community preference in the WTO negotiations,7.3