欧州委、輸入繊維・衣料品に労働・環境基準適合表示の導入を模索

―輸入制限撤廃後の域内産業保護・強化策を提案―

農業情報研究所(WAPIC)

03.10.27

 欧州委員会は28日、繊維・衣料品の輸入割当が2005年に廃止されるのに先立ち、域内産業を守り、強化するための措置を採択した(Textiles and clothing: Commission proposes measures to promote competitiveness)。規制撤廃による輸入増加に見合った輸出を確保するために域外国にEU製品に対する関税の削減を要求すること、域外国からの輸入品に環境・労働基準に合致することを示す特別表示を導入することが柱である。また、EUのファッション業界と繊維製造者の名声から実利を得るために、「メイド・イン・ヨーロッパ」の表示の導入も考える。とりわけ中国、またインドやパキスタンなどの主要生産国との競争力を強化することが狙いである。

 ウルグアイ・ラウンドで合意した輸入割当の廃止後も、EU市場は工業製品全体の平均関税率の2倍近い8%の関税で保護する。アンチ・ダンピング措置も適用する。さらに、中国からの輸入が急増した場合には、セーフガード関税も課す。にもかかわらず、EUよりも関税率が高い途上国の関税率引き下げを要求する。EUの関税率は世界一低いレベルにあり、他国に平等な競争を求めるというのである。

 とりわけ、環境・労働基準に関する表示は多くの途上国の激しい反発を招くであろう。途上国は、WTOでも、環境・労働基準と貿易を関連づけることに一貫して強く反対してきた。

 その他、繊維産業における研究・開発支出の増加、教育・職業訓練政策の強化、知的所有権侵害に対する厳しい対応も要求している。

 他方、29日には、ドーハ・ラウンドの行方が定まらないとして、2004年末で切れる途上国に対する現行一般特恵制度(GSP)を2005年末まで延長適用することを提案した(Trade preferences: Commission proposes to roll over current EU regime for developing countries)。発展のレベルがEUへの特恵アクセスを必要としなくなったと判断される国に対してなされるGSP適用製品の範囲の調整(「卒業」)は、GSP輸入が1%に達しない国には行なわないとした。しかし、社会的配慮によって一層有利な特恵を与える条件については、受益国が国際的に合意された社会的基準(国際労働機関=ILO基準)の適用に向けて前進があることを立証しなければならないように調整するとしている。

 環境基準・労働基準によって域内産業を保護・強化しようとするEUの試みは、切羽詰った状況を迎えているようだ。途上国との軋轢が激しさを増す。

農業情報研究所(WAPIC)

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