EU、シンガポール・イシューで立場変更か―WTO交渉打開へ

農業情報研究所(WAPIC)

03.11.8

 EUがカンクンWTO閣僚会合崩壊の直接の原因となったシンガポール・イシュー―投資ルール、競争政策、政府調達の透明化、貿易円滑化―に関する交渉の立場を大幅に変更するかもしれない。EUや日本がこれらの問題に関する交渉を強硬に主張することに多くの途上国が猛反対、最終日に途上国代表が次々と退場するに及んでカンクン会合議長は宣言案合意を断念したと言われている。

 6日付のファイナンシャル・タイムズによると(*)、同紙が入手した欧州委員会の「オプション・ペーパー」としてのメモランダムのコピーに変更されるEUの立場が述べられている。欧州委員会は、例えば、懐疑的な国は後に加わるような、四つのうち一つまたはそれ以上の問題について交渉する別のWTO加盟国グループを作るなど、任意ベースで交渉を始めることを望んでいるようだ。WTOでシンガポール・イシュー交渉を放棄する用意はないが、これらに関する合意を交渉全体の最終合意の条件とはしないという。

 また、投資ルールと競争政策については、他の二つの問題より議論が激しいことを考慮、四つの問題を別々に交渉することも示唆している。投資ルールと競争政策については、すべての加盟国が交渉にかかわるが、最終的に調印するかどうかは加盟国の選択に任せる方法、あるいは限定された数の加盟国の交渉で協定を作り、後に他の加盟国も加わるという方法が暗示されている。

 貿易円滑化についてはこれらと異なり、すべての加盟国が合意に参加する一層強力な根拠を認めながら、「オープン・マインドは維持すべき」としているという。

 EU諸国閣僚による承認が得られれば、交渉再開の糸口にはなるかもしれない。ただし、農業補助金の一層の削減、あるいは撤廃を求める途上国の立場の変更につながるかどうかはわからない。

*EU shifts stance on deadlocked trade talks,Financial Times,11.6,p.5

農業情報研究所(WAPIC)

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