WTO非農産品交渉 環境・社会福祉・保健立法が非関税障壁として槍玉に―地球の友が分析

農業情報研究所(WAPIC)

05.4.20

 地球の友・インナータナショナルが18日、日本、韓国、メキシコ、米国など(注)の政府はWTOを環境や社会福祉・健康を保護する広範な国内法の解体のために利用しようと計画していると発表した。4月25日から29日まで、ジュネーブで予定されている非農産品市場アクセスに関する交渉を前に環境団体が収集したリストによると、食料、漁業、木材・石油生産、エネルギー効率、化学物質検査、電気電子・自動車産業におけるリサイクルと基準にかかわる法律のすべてが、過去数ヵ月、貿易障壁として上げられているという(Environmental laws lined up for removal by new trade talks)。

 上記の国々が挑戦する非関税障壁の地球の友・インナータナショナルによる分析は、世界中で72の環境・健康基準が挑戦を受けている。分析の詳細と各国の通知のデータベースは、www.foe.co.uk/resource/media_briefing/ntbsanalysis.pdf と、www.foei.org/trade/NTBs.xlswww.foe.co.uk/resource/evidence/non_tariff_barriers.pdfで見ることができる。これらには、国家基準や規制、地方経済開発のための措置、外国投資の制限、表示や認証の要求、輸出制限などに対する息を飲むような挑戦が含まれる。これらの非関税障壁の排除が成功すると、世界中の人々や環境を保護するために構想され、実施される豊かな立法が解体されることになるという。

 これら政府が解体しようとしている法律には、次のようなものが含まれる

 ・新たな、また既存の化学物質の登録(典型例はEUのREACH⇒欧州委、史上最大の環境立法、化学物質規制案を提案,03.10.30)。

 ・自然資源保全や森林・鉱物生産物の輸出制限による途上国の地方経済開発の促進。

 ・メーカーによる廃車の収集とリサイクルの確保。

 ・非人道的狩猟を利用して殺された動物の皮の輸出の禁止。

 ・すべての家電製品のエネルギー効率表示の確保。

 ・小さなエンジンの車に競争力を与える減税や燃料効率基準を通してのエネルギー効率の改善。

 ・医薬品承認の高度の基準の確保。

 ・コンテナや製品がリサイクルできることを消費者に知らせることの許容。

 ・途上国による自動車や石油部門における外国直接投資の監督の許容。

 地球の友・インナータナショナルは、WTOは本性を現しつつある、これは世界中の社会・環境基準への恥ずべき攻撃だと批難する。化学物質汚染、気候変動、森林破壊、漁業資源枯渇・・・、企業の新たな市場へのアクセスがこの結果をもたらす。WTOがこのようなことを継続するのは許せない、我々の将来がかかっていると言う。

 (注)このような国として、今までのところ、アルゼンチン、ブルガリア、キューバ、エジプト、日本、韓国、メキシコ、ニューシーランド、ノルウェー、台湾、米国、ベネズエラ、アフリカ・カリブ・太平洋(ACP)諸国が上げられる。WTOのウエブサイトで見られるこれら文書は、法律が攻撃対象となる国は明らかにしておらず、これを記述する欄は、発表前に空白にされるか、改変されているという。