農業情報研究所


米国・アフリカ:開発援助より貿易

農業情報研究所(WAPIC)

2002.2.14

 14日から20日まで、米国通商代表・ロバート・ゼーリックがサブ・サハラ・アフリカ諸国を訪れる(USTR Press Release:USTR Robert B. Zoellick Visits Sub-Saharan Africa, February 14 ? 20 )。その狙いは、米国とこれら諸国との全般的貿易関係を強化するとともに、昨年11月にカタール・ドーハで始動したWTOの下での新たな多角的貿易交渉に関して目標を共有しようとすることにあるようである。

 米国は、1995年、クリントン大統領がサブ・サハラ・アフリカ地域を訪問して以来、この地域を重視するようになり、2000年には、7年間の論争を経て、アフリカ成長・機会法(Agoa)が議会を通過した。これは、サブ・サハラ・アフリカ諸国の米国への主要輸出品、特に繊維・衣料品に対する米国の貿易障壁を取り払った。その効果は劇的であり、上記のニュース・リリースには次のような事実が列挙されている。

 ケニア:新規投資1300万ドル、今後の投資増加により20万の雇用創出。
 ウガンダ:紡績工場投資2000万ドル、貿易工場での500の雇用創出と棉作農民に利益。
 レソト:1年で1億2000万ドルの新規投資。これは年間の外国からの援助の4倍に相当。
 南ア:2001年の最初の9ヶ月の対米輸出が前年同期比で60%増。
 マラウィ:米国の同国からの繊維・アパレル輸入が161%増。
 マダガスカル:米国の同国からの輸入(2001年の最初の9ヶ月)が前年同期比で1300%増。
 これら諸国の主要輸出品産業の中心的労働者である女性(アパレルで70%、農業で80%、食品加工で90%)に多大の利益。

 しかし、13日付けのFinancial Timesは、2001年11月までの米国の輸入は96%も増加し、米国のアパレル保護措置に悩むアジア諸国の製造業者をこの地域に引きつけているとAgoaの劇的効果を認めながら、開発援助削減に動くブッシュ政権は、これを開発政策のモデルとして役立てようとしていると評している。開発援助よりも貿易が有効というのである。但し、Agoaの主要な利益は経済的というより外交的なもので、新ラウンドの立ち上げに反対するインドやその他の途上国にアフリカ諸国がつかなかったのがその最大のメリットという見方もある(Zoellick takes trade path to Africa,Financial Tiems,02.2.13,p.6)。

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