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拡大欧州経済領域(EEA)、ポーランドが阻止

農業情報研究所(WAPIC)

03.4.12

 4月10日、EUとノルウェー・アイスランド・リヒテンシュタインの間で構成される自由貿易地域・欧州経済領域(EEA)協定のEU拡大に伴う改訂交渉が、最終段階でのポーランドの反対により決裂した。EEAは、この協定により上記三国と拡大EU25ヵ国の自由貿易圏に生まれ変わるはずのものであった。

 この交渉の最大の難問はノルウェーの魚の扱いであった。EUは、ノルウェーからの魚の輸入に割当制度をとってきたが、新たに加盟する10ヵ国のノルウェー産魚の輸入は無税で自由に行なわれてきた。新たなEEAにおいては、既存のEU制度が適用される。このために、新規加盟国の輸入は割当制度に従うことになる。ポーランドは、それでは国内の魚加工産業がもたないと反発したものである。

 ノルウェーにとって、EUとのEEAは死活的に重要なものである。EEAのために払う3国の拠出金は、新たなEEAでほぼ10倍の2億3千300万ユーロとなるが、そのほとんどをノルウェーが負担することも飲んで交渉妥結を目指してきた。それが思わぬ破綻の結末となった。EU側も、EU拡大と新たなEEAのための交渉に、長期にわたって傾注してきた。これならと漸く編み出した協定案が葬られたショックは大きい。漁業に関しては、ノルウェーの魚のEUへの無割当の輸入はアイルランドの強硬な反対があり、協定案修正はさらに混乱を増すだけである。ポーランドの妥協を待つ以外に交渉妥結の道はなさそうである。EEA新協定は、参加28ヵ国の全会一致で採択されねばならず、永遠に不可能の声もある。

 この事態は、拡大EUの将来をも不安にさせる。拡大EUは実際に機能するのかという不安である。EUの重要政策決定は、25ヵ国への拡大後も全会一致でなされるからである。この意味でも、EUが受けたショックは大きいと思われる。

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