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EUとECOWAS、経済パートナーシップ協定交渉開始に合意

農業情報研究所(WAPIC)

03.4.26

 4月24日、ガーナのアクラで開かれた会合で、EUと西アフリカ経済共同体(ECOWAS)が、今年9月に経済パートナーシップ協定(EPA)交渉を開始することに合意したEuropean Commission,EU and West Africa agree to open negotiations for an economic and partnership agreement in September 2003 ,4.25)。ECOWASは、交渉を開く準備を完成するために、7月に会合を開く。

 ECOWASは1975年に創設された地域グループで、1994年に西アフリカ経済通貨同盟(WAEMU)を形成したベナン、ブルキナ・ファソ、コート・ジボワール、ギニア・ビソー、マリ、ニジェール、セネガル、トーゴの8ヵ国にケープ・ベルデ、ガンビア、ガーナ、ギニア、リベリア、ナイジェリア、シエラ・レオーネを加えた15ヵ国で構成される。WAEMUに属する共通通貨(CFAフラン圏)をもつ8ヵ国は、共通の経済・通貨政策を実施するとともに、2000年1月以来、関税同盟を立ち上げ、人・モノ・サービス・資本の移動を自由化する共同市場を目指している。ACPにおいて最も地域統合の進んだ地域ということができる。

 EUとヨーロッパの旧植民地を主体とするアフリカ・カリブ・太平洋(ACP)諸国は、2000年6月、ACP諸国からのEUへの大部分の輸出に非互恵的特恵を与え、開発協力を定める1975年以来のロメ協定を引き継ぎ、その後20年間のEU−ACP経済・貿易協力の枠組みを定める新協定・コトヌー協定に調印した。この協定の中心的目標は、貧困の削減と撲滅・持続可能な発展とともに、ACP諸国の漸進的な世界経済への統合に置かれた。そのために、ロメ協定と実質的に同等の非互恵的特恵が維持される2000年から遅くとも2007年までの間の準備期間内にACP諸国の自発的地域協力・統合を強化し、これら地域グループ(不可能な場合には個別国)とEUの間で地域EPAを結んで貿易自由化を進める方法が選ばれた。西アフリカは、このEPA締結のための交渉を始める最初のACP地域となったわけである。

 EPAのためのEUとACPグループ全体との交渉は2002年9月に始まり、今年9月から個別地域との交渉を開始することが目指されている。ACP諸国は、EPA交渉のために地域統合の努力を強化してきた。しかし、ACP諸国のすべての地域で統合が順調に進んでいるわけではない。多くの地域グループは、交渉の前提となる十分な制度的枠組の構築の途上にある。地域グループを構成する国さえ確定していない場合もある。例えば、東部・南部アフリカ共同市場(COMESA)は2004年の関税同盟設立を計画しているが、メンバーが一部重なる南部アフリカ開発共同体(SADC)も2008年完成予定の自由貿易地域(FTA)を2000年に始動、さらに関税同盟、最終的には共同市場を目指している。一国が二つの関税同盟に属することはできない。いくつかの国は既にCOMESAをオプト・アウト、SADCを選んだが、ジンバブエ、ザンビア、マラウィ、モーリシャスはまだ両方のメンバーである。

 西アフリカとの交渉開始の決定は遠大な構想の実現に向かう大きなステップではあるが、この過程が順調に進む前兆とはならないだろう。

 参照:北林寿信 EU−ACP新20年協定について 国際農林業協力 23-7 00 11月号 25-30頁。