農業情報研究所

HOME グローバリゼーション 食品安全 遺伝子組み換え 狂牛病 農業・農村・食料 環境 ニュースと論調

ペルーと南米共同市場が貿易協定調印、米国への対抗力強化

農業情報研究所(WAPIC)

03.8.26

 25日、ペルー大統領・トレドとブラジル大統領・ルーラ・ダ・シルバが、ペルーと南米共同市場(メルコスル、Mercosur)の間の自由貿易協定に調印した。11月1日に発効する。相互に関税を漸減、メルコスルのウルグアイ、パラグアイとの間では13年、ブラジル・アルゼンチンとの間では15年かけて障壁を完全に撤廃する。これはラテン・アメリカの経済・社会統合に向けての第一歩にすぎないが、外交政策が反対方向を向いてきたペルーとの協定に漕ぎつけたことは、ブラジル外交の大きな勝利と言える。

 メルコスル、特にブラジルは米州自由貿易協定(FTAA)交渉における米国との交渉力の増強を求め、南米地域統統合の拡大と深化を追及している。メルコスルはアンデス共同体(ペルーのほか、エクアドル、コロンビア、ベネズエラ、ボリビアを含む)と自由貿易協定交渉をしているが、一進一退の状態が続いてきた。今回の協定調印にもかかわらず、ペルーは、以前から追求しているメキシコ、米国との二国間協定を放棄するつもりはない。しかし、他のアンデス諸国のメルコスルへの接近を促すことは間違いなさそうである。既に、ベネズエラは同様の協定締結の意志を表明している。

 FTAA交渉は2005年妥結を目指しているが、ブラジル等は、米国が護持する巨額の農業補助金や平均関税率では世界最低と言いながら南米の利益に大きくかかわる特定品目(オレンジ・ジュ−ス、砂糖など)に課される高率関税、恣意的なアンチ・ダンピング措置発動の撤廃を求め、交渉は難航している。米国は、これらの問題はWTO交渉に委ねると逃げている。ブラジルが米国の身勝手な要求を押し返し、有利な協定を勝ち取るためには、米国に匹敵する交渉力をつける必要がある。そのためにはラテン・アメリカ全体が一致して交渉に臨まねばならない。今回の調印は、それに向けての第一歩として重要な意味をもつ。

 関連ニュース
 Peru Signs Free Trade Pact With Mercosur Nations,Dow Jones,8.25
 South America moves towards trade integration,Financial Times,8.26,p.3

 関連情報
 米国、米州自由貿易圏の早期発足へ圧力(03.7)
 
米州自由貿易協定(FTAA)と軍国化への抗議、ボリビアで道路封鎖(03.1)
 
南米、貿易ブロック排除に動く(02.12)
 
西半球自由貿易協定、数インチの前進(02.11)
 
アメリカの貿易(社説)(02.11)
 
ラテン・アメリカ諸国、米国貿易協定に懐疑的(02.11)
 
ブラジル、米州自由貿易協定(FTAA)加速のためのサミットを阻止(02.9)
 
米国・ラテンアメリカ:境界を破る(02.5)