米豪FTA交渉、年末合意はなし―南北FTA交渉は停滞するだろう

農業情報研究所(WAPIC)

03.10.4

 進行中の米国との自由貿易協定(FTA)で、オーストラリアが米国の農業輸出補助金とFTAの政府調達協定に含まれる「バイ・アメリカ法」に挑戦している。10月3日付のFinancial Review紙が伝えた。

 交渉団長の上院委員会での証言によれば、依然として農業が最大の難問の一つで、オーストリアは、とくに牛肉・乳製品・砂糖などの一層の市場アクセスを要求している。また、米国農業法により米国農企業に与えられる巨額の補助金は標的となっていないが、オーストラリアにとって重要なな第三国市場向けの輸出補助金に関する一定の合意を求めているという。

 オーストラリアが重点をおくもう一つの問題は、海外企業が米国政府機関に供給することを妨げる「バイ・アメリカ法」である。オーストラリア企業からの供給が許される特殊機関のリストと供給の上限の設定を求めている。

 交渉はハワード首相とブッシュ米国大統領が約束したように、年末までに終わることはなさそうだという。

 カンクンWTO閣僚会合の失敗を受け、米国はFTA交渉を加速させようとしているが、WTO交渉の合意を阻んだ要因はそのままFTA交渉を阻む要因になる。二国間交渉、あるいは途上国・中進国相手ならば思惑どおりに事が運ぶと考えるのは、いまや時代錯誤だ。

 米州自由貿易協定(FTAA)では、農業補助金撤廃・削減とアンチ・ダンピング乱用をやめさせようとするブラジルがラテン・アメリカ諸国を糾合、対等の交渉力を発揮しようとしている。アフリカ諸国もカンクンで結束力を強めており、南アフリカはブラジルが主導する南米共同体(メルコスル)とのFTA交渉を加速、ブラジル・インド・ブラジルの三角FTAさえ模索している。南部アフリカ関税同盟との交渉でも、米国の思惑どおりに進展するかどうか疑問だ。米国とのFTAに非常に熱心なタイでも、補助金に支えられた米国農産物の氾濫やシンガポール・チリとの協定で米国が強要した短期資本の移動規制廃止を含む投資にかかわる協定への警戒は強まっている。金融危機の余波がさめやらない今、短期資本の移動まで完全自由化すれば、将来、国の経済の破滅につながりかねないという恐怖がある。

 ラテンアメリカ、中国・インドを含む東南アジアを中心とする地域、アフリカに見られるような途上国間、途上国・中進国間の地域協定締結・強化の動きは加速するであろう。それと同時に、これら諸国・地域と先進国との交渉は、ますます停滞する可能性がある。メキシコ・韓国・東南アジア諸国とのFTAを急ぐ日本も、焦ると同時に、時代錯誤の甘い夢をむさぼっているように思えてならない。

農業情報研究所(WAPIC)

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