タイ:米国とのFTAは主権を侵す、国民の合意を得よ―学界とNGO

農業情報研究所(WAPIC)

03.10.14

 14日付のバンコク・ポスト紙によると(Brake urged on Thai-US free trade)、学界や活動家が、米国との自由貿易協定(FTA)交渉に入る前に政府は国民と議会の合意を得るべきだと運動している。新たに結成された「FTAウォッチ」グループの一員であるチュラロンコン大学法科のチャロ−ンは、タイ米FTAの悪影響は厳しく、政府は協定にすべての側面を公開し、協定に調印すべきかどうか国民に問わねばならないと言っている。

 米国政府は先に発効したシンガポール・米国間の協定が他のアジア諸国との協定の雛型になるといっており、これに基づくグループの分析では、貿易自由化は米国企業がタイから利益を刈り取ることを許すものとなる。タイは米国の投資を妨げ、あるいは米国の市場アクセスを遮断する法律と規制に撤廃を強要される。FTAはタイ製品にとっての市場アクセスを拡大したり、貿易障壁を和らげるだけでなく、国の主権、法制度、農民の権利を侵犯することにつながる。

 「フォーカス・オン・グローバル・サウス」は、米国の自由貿易パートナーは米国製品に対するゼロ関税政策を要求されるとともに、外国投資家を国内投資家を同等に扱うことを要求する内国民待遇の受け入れを要求され、タイの中小企業を害することになると言う。生物・遺伝子資源保護グループ・「バイオタイ」は、シンガポール米国協定の条件に従うと、タイにとっては有害な面が多いと言い、とくに米国バイテク企業による薬用植物や現金作物などの土着植物種の支配を許すことになる生物特許のフレームワークを恐れている。

 FTAウォッチは、政府の交渉過程を崩壊させることは狙っていないが、協定を一層慎重に検討することを要求、他の国とのFTA交渉も吟味、わかったことは完全に広報するという。

 タイと米国は、今月末にバンコクで開かれるアジア太平洋経済協力会議サミットに際し、FTA交渉入りを発表する予定である。ここに取り上げられたほか、米国企業は、とりわけ知的所有権(著作権など)の厳格な保護や税関手続の改善を強く要求している。FTA交渉の基礎として利用される最終報告書の細部を仕上げているタイ開発研究所(TDRI)は、協定によりタイの輸出は増加し、経済成長と投資が高められる可能性があるとしながらも、著作権保護の厳格化は、消費者に一層高価なコンパクト・ディスクなどの製品の購入を余儀なくさせる悪影響もあり得ると懸念している。投資の問題とともに、これらの問題も交渉進展の大きな障害となる可能性が残っている。

農業情報研究所(WAPIC)

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