ブラジル、アフリカとの協力関係強化、公正な貿易を追求

農業情報研究所(WAPIC)

03.10.10

 ブラジルのルーラ大統領がモザンビーク、ナミビア、南アフリカなどアフリカ5ヵ国を歴訪、これら諸国との協力関係強化を約束するとともに、WTO貿易交渉などを通して途上国の利益を追求するための「共同行動」を要請した。およそ100人のビジネスマンと7人かの閣僚を伴った訪問であることが大統領の強い意欲を示している。

 訪問したすべての国と総額1億5,000万ドルになる協力協定に調印、モザンビークとナミビアにはエイズ薬コピー薬を生産する工場の建設に協力することにも合意した。WTO交渉で最貧国にコピー薬の輸入が許される見通しとなったが、それでも大部分の貧しい人々には薬を買う余裕はまったくない。ブラジルはコピー薬を生産する数少ない国の一つであり、国営工場で生産された薬は50万の国内患者に無償で配布されている。エイズとの戦いの模範例をこれらアフリカの最貧国に移転しようというのである。これは言葉が比較的似ており、訓練や技術移転が容易に進むと考えられた結果である。モザンビークでは150万人がエイズ陽性と言われるが、薬を受け取るのは1,000人にすぎない。この計画が成功すれば、エイズとの戦いに劇的な成果が期待される。

 これに象徴されるように、ブラジルとアフリカの歴史的関係は深い。大統領は、「アフリカとの絆を結ぶことは、我々にとって歴史的、道徳的、政治的必要性に答えるものだと述べた」。現在のブラジル人口1億8,000万人のうち、7,600万人がアフリカ系の子孫である。

 アンゴラ議会では、ブラジルがアフリカ製品に市場を開く用意がある、最貧国製品の無税輸入を許すWTOのルールと両立する市場開放の形を研究すると述べた。南アフリカ・プレトリアでの記者会見では、途上国製品の公平な市場アクセス交渉を保証できるように、アフリカ諸国、中国、ロシア、インド、メキシコと共に戦略的政策を発展させることを望むとも語った。租税協定、技術協力協定に調印した南アフリカ・ムベキ大統領は、ブラジルがアフリカ大陸との関係を一段と強化したことに歓迎の意を表した。

 先進国のなかには、ブラジルのような「中進国」と最貧途上国の利害は矛盾すると言い、カンクンWTO閣僚会合で示された途上国の立場はいずれ弱まり、崩れると期待を込めて予想する向きもある。しかし、先進国に鋭く対立したG20+グループの先導役を務めたブラジルは、最貧国との協力関係の強化でも成果をあげつつあるようだ。来月米国マイアミで開かれる米州自由貿易協定(FTAA)交渉の大詰めの会合に向けても、米国が要求する特許・複写権、政府調達、投資などを含む「包括的」協定に反対する立場は崩していない。11日に行われた米国との非公式事前会合では、利害の異なる国に分けた別協定を認めるところまで妥協が進んだようだが、米国等は、包括協定に参加しない国には他の国に与えられる市場アクセスを全面的には享受させないといった差別扱いを主張しており、ブラジルはこれに対する反対の立場も崩していない。FTAA交渉の見通しはなお闇である。

 関連ニュース
 Le président Brésilien Lula da Silva en tournée africaine pour promouvoir la solidrité Sud-Sud,Le Monde,11.8.
 Lula renews call for fairer trade,BBC News,11.9.
 U.S.,Brazil Bend a Little on Free-Trade Agreement,The Washington Post,11.9.

農業情報研究所(WAPIC)

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