世銀報告書、メキシコのNAFTAからの利得は微小

農業情報研究所(WAPIC)

03.12.18

 世界銀行が「ラテン・アメリカ、カリブ諸国のためのNAFTA(北米自由貿易協定)の教訓」と題する浩瀚な報告書を発表した。世銀の特集記事(Nafta: Positive For Mexico But Not Enough,12.17)によれば、報告書は、NAFTAからメキシコが得た利益はささやかなものにすぎないことを明かにしているという。

 それによれば、メキシコが利益を刈り取る能力は、とりわけ弱体な経済制度、貧しい教育システム、硬直的労働法などの国内政策の欠陥によって、限定されている。このような制度的弱点ははラテン・アメリカ、カリブ諸国に共通しており、米州自由貿易協定(FTAA)から得られる利益も限定されるだろうという。

 NAFTAのメキシコへの経済的影響は概してプラスと評価できるものの、多くの場合、ささやかなものである。一人当たり国内総生産(GDP)や実質賃金の成長は、NAFAT発効後、顕著ではない。94年のペソ切り下げが引き金となった経済・金融危機がこの数字に大きく影響している。

 メキシコの輸出と外国直接投資流入(対内直接投資)は、NAFTAがなければそれぞれ25%、40%少なかったと推計されるが、輸出は協定前から大きく増えていたし、対内直接投資はラテン・アメリカの平均を大きく上回るわけでもないという。メキシコが最近達成した輸出市場シェアの拡大は、80年代末以来の一方的貿易自由化を反映したものだ。

 報告書は、NAFTAの非常に制限的な原産地規則と域内でのアンチダンピング・補助金相殺関税措置の維持が、メキシコのNAFTAからの利得を制限してきたとも言う。

 関連情報
 NAFTAはメキシコの雇用に貢献せず、環境に悪影響―カーネギー財団,03.11.20

農業情報研究所(WAPIC)

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