EU、アンチダンピング・ルール改訂―構成国による制裁阻止が一層困難に

農業情報研究所(WAPIC)

04.3.9

 EU諸国が8日、アンチダンピング及び補助金相殺措置の利用に関する欧州委員会の提案を承認した(Anti-Dumping: EU acts to increase transparency, efficiency and predictability in the use of trade defence)。パスカル・ラミー通商担当委員は、この変更は、透明性・予測可能性・機能性を増すことを目的とし、不公正な貿易慣行から被害を蒙るEU企業からの要求とともに、第三国の輸出業者の要求にも応えるものだと言う。また、貿易上の防備の強化は開放的貿易システムの全体的利益となるもので、この問題は進行中のWTOドーハ・ラウンドで適切に取り組まねばならないと言う。変更の実際的効果がどれほどのものとなるかは未だ分からない。だが、措置の決定に関して、EU構成国が一層決然とした態度の決定を迫られることは確かなようだ。

 新たなルールの下では、確定アンチダンピング・補助金相殺措置は、欧州委員会に提案から1ヵ月以内に構成国の半数以上が反対しないかぎり、採択されたとみなされる。従来、確定措置を課すためには、構成国の半数以上の支持がなければならなかった。この場合には、「棄権」は反対と同じことになった。今後は、はっきりと反対しないかぎり、措置決定を阻止できなくなる。曖昧な態度によって消費者にも産業にも、あるいは国の伝統的な貿易思想(例えば英国や北欧諸国の自由主義思想)にも、なんとか顔を立てるといったことは難しくなる。この点が最も重要な意味をもつ変更である。

 第二の変更は、既存措置の見直しや形態・レベルの変更のための調査に厳格な期限を設けたことである。従来も見直し調査は12ヵ月以内に終えるという目安はあったが、もっと長引くことが多かった。そのために、輸入業者と第三国からの輸出業者は一層の予測可能性を求めてきた。変更はこのような要請に応える。とくに5年間の有効期限をもつこれらの措置が期限を迎えて行われる見直しの場合、調査は15ヵ月以内に完了せねばならないとされた。5年間の有効期限内に当事者の要求で行われる「暫定見直し」についても、06年からは15ヵ月以内に行うとされた。

 第三の変更は、措置の効率性を改善するもので、第三国からの輸出業者・EU内の輸入業者への措置の執行のルールを明確化する。制裁関税の代替措置としての価格約束―輸出業者が最低輸出価格を約束すること―に関して、輸出業者が約束を守らない場合、欧州委員会は、今後は、価格約束を取り消し、関税に置き換える。従来は、価格約束取り消しと関税再賦課の二重の法的手続が必要であった。

 その他、アンチダンピング・相殺措置迂回防止などに関するルールの明確化もなされる。 

農業情報研究所(WAPIC)

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