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イギリス:遺伝子組み換え動物のコントロールを勧告ー政府諮問機関

農業情報研究所(WAPIC)

2002.9.10

 遺伝子組み換え(GM)動物の安全性については、先月、全米科学アカデミーが報告したばかりであるが(米国:科学アカデミー、遺伝子操作動物の安全性で報告書,02.8.22)、今度はバイオテクノロジーの農業と環境への影響に関するイギリス政府の諮問機関である「農業・環境バイオテクノロジー委員会(AEBCが「動物とバイオテクノロジーに関する報告」を公表した(REPORT ON ANIMALS AND BIOTECHNOLOGY,02.9.3)。報告は、全米科学アカデミーの報告と同様、GM動物が逃げ出し、野生種と交雑する可能性に最大の懸念を示し、環境保全のために、GM魚の商業的開発の禁止を含むGM及びクローン動物の関する新たなコントロールを要請している。

 報告は、医薬品をミルクの中に生産するGM羊、強力な軍用防具の生産に使用されるクモの糸を生産するように改変された山羊、成長を速めるように改変された鮭など、可能性のあるあらゆる種類のGM動物に目を配っている。委員会のM・グラント委員長は、現時点では、慣行農業におけるGM及びクローン動物の利用は少し先のことになるが、「政府は、スーパーマーケットの棚のGM作物やGM食品をめぐる問題に国民が突然気付いたときに起きたような問題を避けるために、この期間を利用しなければならない。最初のGM動物が農場に現れ、あるいは環境中に放たれる前に、国民の情報に基づく議論がなされ、適切な規制組織が設けられねばならない」と言う(AEBC Press Release)

 商業的利用が最も近い動物にGM鮭がある。米国のマサチュセッツに本拠を置き、カナダの大西洋岸に実験所をもつAqua Bounty Farms社は、通常の鮭よりも6倍も早く生長するGM鮭の販売するために、食品医薬局(FDA)の許可を待っている。環境保護論者は、このような鮭が逃げ出せば、野生鮭との交雑が起き、また生存競争で野生鮭に打ち勝つことになると恐れている。会社は、販売されるすべての鮭は不妊の雌であるから交雑の恐れはないと言う。しかし、全米科学アカデミーも、GM魚の安全性を証明する十分な証拠はないと報告したばかりである。委員会は、GM魚からの海洋環境保護は国際的なものでなければ意味がないと言う。一旦海に出れば、イギリスの海域に入るのを防ぐ手段は」ない。

 報告は、全米科学アカデミーの報告と同様、バイオテクノロジーが動物福祉に与える悪影響にも注意し、自然のあるまじき変化から動物が非保護の状態に置かれる抜け道を閉ざすために、90年の歴史をもつ動物福祉法のオーバーホールも要請している。 

 報告は以下の諸点を勧告する。

 ・GM動物、特に農用動物の開発を考査するための新たな戦略的諮問機関の設置。

 ・関連動物福祉規則の見直し。

 ・既存の動物福祉規則の解釈と執行の有効性の独立機関による監査。

 ・予期せざる健康または福祉問題を調査するためのGM及びクローン動物の進歩の監視システム。

 ・沿岸養殖場でGM魚の商業的開発の禁止。

 ・GM及びクローン動物と生殖器官の国際移動の監視。

 関連ニュース
 
Advisers urge new controls on GM animals,FT com,9.4
 Britain urged to ban GM salmon,Guardian Unlimited,9.4

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