農業情報研究所

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イギリス:途上国のGMO研究を「静かに」援助、英紙が報道

農業情報研究所(WAPIC)

2002.9.26

 9月15日付のイギリス”インデペンデント”紙が、国際開発省(DFID)は、新たな遺伝子組み換え(GM)動物・作物・薬品を創り出すために、第三世界全体で1,340万£の資金を「静かに」供給したという記事を掲載している。今までには公表されていないプログラムは、アフリカ・アジア・ラテンアメリカ・ヨーロッパの24ヵ国以上の国での研究に資金を供与しているという。

 慈善団体・Genewatch UKのディレクターであり、政府アドバイザーでもあるS.Mayer博士は、DFIDは研究プログラムの全容について国民を欺いている、完全にオープンにしなければならないと言っている。しかし、ショート国際開発相は、省は西側の政府や会社が創り出すGM作物や医薬品に遅れをとらないように貧困国を助けているだけであり、慈善団体が途上国にどうすべきか口出しする権利はない、途上国自身が決めるべきことだと反駁している。

 しかし、途上国は、ますますGM技術を拒否するようになっている。4年前、アフリカの南アを除くすべての国の代表者が、「安全でなく、環境に優しくもなく、我々に経済的利益を与えることもない技術の推進のために」貧困が利用されることに「強く反対した」と言うローマでのGM作物・食品会議の声明に調印している。この夏は、飢餓に瀕するザンビア・ジンバブエ・モザンビークが米国からのGM穀物援助を拒否した。ヨハネスブルグの地球サミットでこれらの国の姿勢を攻撃したコーリン・パウェル米国長官のスピーチも、代表団のブーイングに遭っている。

 DFIDのプログラムは、1980年代末の耐病性キャッサバなどを創りだすプロジェクトにまで遡る。メイジャー政権下の政府開発援助は、速く成長する遺伝子組み換え豚の開発を助けるために、中国に資金を供給した。また、ツェツェバエの遺伝子改変実験に50万£を支出した。1990年代半ば以降、プログラムは、ラテン・アメリカ、アジア、アフリカ、ヨーロッパの24ヵ国に拡大され、ほかにもリストアップされていない22ヵ国が関係しているという。これらのプロジェクトには、アフリカとインドにおけるウィルス・害虫抵抗性ライス、エチオピアとインドにおける山羊と牛のワクチン、タイにおけるGMティラピア、ボリビアのゾウムシ抵抗性ポテト、タンザニアにおけるGMトウモロコシなどが含まれる。

 今年、DFIDは、GMOのあり得る環境放出や、途上国におけるバイオテクノロジーが生み出す経済的・政治的問題に関する多数の研究にかかわる1,030万£相当のプロジェクトを作り上げた。しかし、このリストには、310万£相当の他の22のプロジェクトが掲載されていない。

 環境保護グループ・地球の友は、政府は、国民の前ではGM技術に慎重にアプローチしていると言いながら、海外ではがむしゃらになっていると言い、DFIDの支出の調査を行なうように議員に要請している。