農業情報研究所
環境ストレスに耐える遺伝子組み換え稲開発の発表
農業情報研究所(WAPIC)
2002.11.28
コーネル大学、ソウル大学などの研究者からなるチームが、大腸菌からの糖(トレハロース)遺伝子を借りて、乾燥・塩分・冷温に耐える遺伝子組み換え米(GM)を作り出したと発表した(Ajay K. Garg ,Ju-Kon Kim ,Thomas G. Owens ,Anil P. Ranwala,Yang Do Choi,Leon V. Kochian,and Ray J. Wu;Trehalose accumulation in rice plants confers high tolerance levels to different abiotic stresses,PNAS Early Edition,November 27, 2002 )。米の科学的組成は不変で、収量も増加するという。
トレハロースはグルコ−スが結合した二糖類の一種で、環境ストレスに遭遇している生物中の分子の安定を助けるとされている。藻類・菌類・昆虫・無脊椎動物など、自然界に広く分布する。今までにも、この遺伝子を他の植物に組み込む試みはなされてきたが、対象植物を損傷することなく移転させることはできなかった。チームは、二つのトレハロース遺伝子を結合した「融合」遺伝子を組み込み、また糖の遺伝子暗号が植物がストレス下にあるときだけにスイッチが入る特別のプロモーターをトレハロース遺伝子の前面に付加することでこうした問題を回避したという。
研究者がBBCに語ったところによると、この遺伝子は少量であるが野生・栽培稲に存在し、環境へのリスクはない。そして、圃場での栽培が実現すれば多くの人々を養うことができるから、土壌や気象の条件が厳しい世界の諸地域で栽培できるように、技術は種子企業に売るのではなく、公共の財産となろうという。
関連情報
GM rice can tough it out,BBCNews,11.26