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イギリス:GM作物フィールド実験評価報告を王立協会が拒否

農業情報研究所(WAPIC)

03.9.22

 「インディペンデント」紙によると、遺伝子組み換え(GM)作物の商用栽培解禁を目指して行なわれてきた3年間のフィールド実験の結果を評価する報告書の公表をロイヤル・ソサイエティー(王立協会)が拒否したらしい。政府は今年中の解禁を目指し、国民論争を組織、GM作物の経済的便益とコスト、及びGM食品・環境影響の評価を独立委員会に諮問した。しかし、7月に終わった国民論争は、GM食品・作物に対する国民の不信をかえって強める結果になったと言われ、二つの独立委員会の7月の報告も政府への逆風を強めるものとなった。

 ただ、最も論議が集中するGM作物の環境影響については、独立委員会の報告は、「現世代のGM作物に関するフィールド実験は、田園地帯を侵略し、問題のある植物になる可能性が非常に少ないことを示している」と言いながらも、フィールド実験の結果の最終的評価は秋を待たねばならないとしていた。政府の決定に大きな影響を与えるであろうこの評価は、10月16日にロイヤル・ソサイエティーにより発表される予定となっていた。

 ところが、ロイヤル・ソサイエティーは、八つのテクニカル・リポートの複雑な結果を説明し、要約するこれらリポートの一つを拒否したというのである。このリポートの起草者は、審査を行なう科学者から、これは新しいデータを含まないからと、発表を止めるように勧告されたという。しかし、この結果は、GM作物が野生動物に悪影響を与える可能性を明かにするだろうと予想されており、ロイヤル・ソサイエティーのこの行動は、そのGMびいきの立場への偏向を示すものとの疑いを強めるだろう。

 実験を立ち上げた前環境相・ミーチャーは、この概観ペーパーの発表の拒否は、ロイヤル・ソサイエティーの動機をめぐる疑惑を生むと語ったという。

 Royal Society rejects 'anti-GM' report,Independent,9.21

 関連情報
 英国:GM作物の安全性は不確実、政府委員会報告,07.7.22
 
英国:GM作物の経済的便益は小ー首相府戦略ユニット,07.7.16